2021-07-20

光源氏

 ようつべ仔猫動画を観た。その動画の内容はというと、拾われた元気一杯仔猫が、ある朝急に元気をなくして瀕死状態になってしまったというものだった。

 その後、仔猫は無事一命をとりとめるのだが、経緯からし仔猫が元気をなくし体調不良になるのもむべなるかなって感じだった。

 仔猫はずっと鳴き続けていたのだ。飼い主は仔猫にエサと適切な環境を用意し丁寧に世話をしたが、鳴いている仔猫を鳴かせたままそっとしておいた。

 壊れそうなほどに小さな仔猫しか怪我を負っていた。それでは触らずにそっとしておくのが善意というもの。だが、赤ちゃんにとってただの「鳴く」という行為は、実は大変な重労働だということを、飼い主は知らなかったのだと思う。

 赤ちゃんお腹が空いている訳でも寒くもなく便秘でもないのに鳴き続けるとき、それはおおかた親を恋しがってのことだ。だが、しばらくすれば赤ちゃんは鳴き疲れて静かになる。おとなしく、従順に見えるかもしれない。ところがその時、赤ちゃん疲労状態にある。そして疲れて眠るうちにお腹を空かせて低栄養状態になる。実はこの時、赤ちゃんは寝ているというよりは失神している。

 鳴かせ過ぎというのは良くないのだ。保育者としては手がかからず楽な気がしてしまうけど、赤ちゃん疲労栄養失調で消耗し、やがて発育不良に、あるいは最悪死んでしまう。

 だから、過干渉に見えても、鳴いている赤ちゃんは抱き上げてあやした方がいい。人間の腕の中は母親猫のお腹ほど温かくないけど、それでも抱っこによる安心感は、仔猫には必要だ。

 衰弱し、回復した仔猫動画を見て、昔、私の家にもその仔猫と同じくらい小さくてヨチヨチな赤ちゃん猫が迷い込んできたことがあったのを思い出した。

 その仔猫はあまりにも小さな孤児だったけれど、人間特別介入しないまま、大きく育った。というのも、うちで飼っていたオス猫に面倒を見られていたからだ。

 オス猫は所詮オス猫で、母親猫のように乳も出せないし仔猫のためにエサを捕ってくるようなことも出来なかったが、仔猫を抱いて眠ることは出来た。仔猫はいつもオス猫にくっついていた。寒い夜は、二匹は狭い段ボールの中に一緒に入り、オス猫が仔猫を抱えて丸くなって寝ていた。

 そんな感じだったので、オス猫は特別面倒見が良かった訳ではないのだけど、仔猫無駄鳴きで体力を消耗することなく、すくすくと育った。

 一年もしないうちに仔猫はオス猫と同じ模様の仔猫を何匹か産んだ。

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