知り合いからのおすそ分けで親鳥をもらった。
恥ずかしながらこの年令まで親鳥という食材の存在をしらなくて、一応もらうときに「地鶏だから歯ごたえ強いから気をつけてね」くらいは言われたんだけど、いうて鶏肉でしょ?と高をくくっていたのが失敗だった。
地鶏といえばパリッと塩焼き。余計な味付けをせず、歯ごたえを楽しむのが良さそうだ。
そう思って取り出してみると確かにいつもの鶏ももとは全然見た目も違う。
まずサイズが小さいし、肉も赤い。
言われてみれば白い筋も多いが、肉に触れた感触はいつもの鶏肉と大差がない。
弱火でじっくり火を通してから強火で一気に皮目を焼き上げる。
思っていたよりもドリップが多く加減が難しい。
焼酎片手にいざ実食。
固い。思っていた3倍固い。
最初は気にならなかったが、噛めば噛むほど脂が滲み出てくる。
焼酎で流し込みつつ、噛み続ける。
次第に奥の方から独特の獣臭さも湧き上がってくる。
とりあえず焼いた分は食べよう。
欲張って3枚分も焼いてしまった。
半分に差し掛かったところで口の中に異音が響いた。
バリッともガリッともつかない音がした直後、刺すような痛みが走る。
必至で痛みをこらえながら洗い流すと、ほっと出たため息が再び痛みになって突き刺さった。
もう食欲なんて微塵も残っていない。
レシビを検索してみると、最初から細切りにしたり大量の香辛料で調理するものが多かった。
少なくとも、ちょっと料理をかじった程度の人間が調べもせず手を出して良い食材ではなかった。
すぐに歯医者に電話して、今は型取りが終わって新しい歯の出来上がりを待っている状態だ。