2021-01-04

腕時計明日、二つ捨てる。

腕時計明日、二つ捨てる。

これらを捨てることを決意するのに10年以上かかった。

ゴミ袋の奥底に詰めたいまも、

明日収集時刻までに掘り返さないという自信はまだない。

誰とは言わないけれど

5年以上まえと、10年以上まえに、

家族二人を別々に自殺でなくしてしまった。

自殺というのか、事故というのか。

そのときに二人がそれぞれつけていた、時計

一人は、遺体が破損してしまっていたので

腕時計の革ベルトには、腐敗臭が染み込みまた

白くて小さな蛆が何匹かくっついてうねっていた。

その腕時計は、あるお祝いでその人がもらった記念品時計だった。

まだ気持ちが整理されたわけでは、ない。

自分にもいまだ責任を感じる。

自分だけ生き残っていていいのかと、

彼らのように苦しまなくてよいのかと、

毎日思いながら生きている。

その罪悪感を忘れるために日々

忙しい日々で紛らわせているようなものだ。

つらい気持ちを忘れることは悪のように感じていた。

だけども、わたし

そんなふうにして

抜け殻として

つらい思い出を緩和させるために

日々を散漫に過ごすのはやめようと思った。

一歩を踏み出して

わたし人生を踏み出さないといけないと思った。

いまはわたしは、わたし人生を歩めているだろうか?

もう中年になってしまった。

むかしの友達は各方面で成果を残している。

大きな仕事をしている。

有名人になっている。

結婚して子供3人の子育てにおわれている。

かれらが最後の日まで腕につけていた時計を捨てることと

その決意は、関係していると思う。

そのふたつの腕時計を思い切ってゴミ袋に入れたら

その腕時計が置かれていたガラクタ部屋と化していた一部屋が

急に片付きはじめたので、驚いた。

フローリングの床が見えて来た。

とても気持ちよかった。

心が軽くなったのでYouTubeダンス音楽を流して、すこし飛び跳ねたりした。

その部屋にいると、

いつも苦しくなるのだった。

時計が重しになっていたのだなと思った。

いるのだかいらないのかわからないようなもの

床に広がりあるいは重ねられてしまっていたが

このお正月で、1つひとつ、いるものといらないものに分けてしまった。

明日は、ゴミ袋を4袋出そう。

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