これらを捨てることを決意するのに10年以上かかった。
ゴミ袋の奥底に詰めたいまも、
誰とは言わないけれど
5年以上まえと、10年以上まえに、
白くて小さな蛆が何匹かくっついてうねっていた。
その腕時計は、あるお祝いでその人がもらった記念品の時計だった。
まだ気持ちが整理されたわけでは、ない。
自分だけ生き残っていていいのかと、
彼らのように苦しまなくてよいのかと、
毎日思いながら生きている。
その罪悪感を忘れるために日々
忙しい日々で紛らわせているようなものだ。
つらい気持ちを忘れることは悪のように感じていた。
だけども、わたしは
そんなふうにして
抜け殻として
つらい思い出を緩和させるために
日々を散漫に過ごすのはやめようと思った。
一歩を踏み出して
大きな仕事をしている。
有名人になっている。
その決意は、関係していると思う。
急に片付きはじめたので、驚いた。
フローリングの床が見えて来た。
とても気持ちよかった。
心が軽くなったのでYouTubeでダンス音楽を流して、すこし飛び跳ねたりした。
その部屋にいると、
いつも苦しくなるのだった。
時計が重しになっていたのだなと思った。