コロナの影響もあってか店内はいつも空いていて席も広くとってあるので行きやすい、軽い軽食を出す喫茶店だ。
だいたい同じ時間帯に行くのだが好きな席があるので心のなかでここは俺の席と思っている。
しかし、その同じ時間帯に俺の席に座ろうとするもうひとりの常連客がいる。
そのおっさんは恐らく俺より以前からその店の常連で、新参である俺が先にその席に座ってると
「また俺の席に座ってるやんけ」という顔をする。
予約席というわけではないのでもちろん俺は譲る気はない。
逆の場合もある。いつもの席に向かうとおっさんが俺の席に座っている。
(やられた)と思う俺をおっさんは一瞬見る。表情にほぼ変化はないが俺は見逃さない。
おっさんの目が、ほんの少しだが満足げに鈍く光るのを。
こうやって先に座られたほうはしぶしぶ別の席に座る。
空いてるのでハッキリいって別の席でも快適だ。
おっさんより早く席に座るために早く行くというのはいやなのだ。
おっさんも恐らく同じタイプで、自分より後から常連になった俺のせいで
早めに店に来るということはしたくないらしい。
というわけで毎回どちらが先に座ってるかはタイミング次第となっている。
俺はリモートワークで自由時間増えたから平日にもこうやって住宅街にある店に来てるけどさ。
なんかあれか、家に居場所がないってやつか?
しかめっ面で見るからに融通が効かなそうだもんな、年頃の娘とかいたら絶対嫌われてそうだなおっさん。
お前たまに店員と話してるけど話もつまらないぞ。だいたいそういうので常連アピールしてくるのがせこい。
俺がいるからわざわざそういう話してんだろ?わかってるんだぞ。
なぜ俺はおっさんの事を考えてるのか。せっかくのゆったりできる時間をおっさんの事を考えるのに使うなんて最悪である。
俺は緊張しておっさんの顔が見れなかった。
おっさんも俺の顔を見ようとしなかった。
お互いの緊張が伝わるようだった。
いっそのこと話しかけたりしちゃえば、じゃあ俺はこっちに座るようにしますね、みたいな展開もあり得るのかもしれない。
二人とも迷惑客としてマークされてそう
友達できてよかったな。