2019-06-14

ビジホを転々とする勇者

 こち勇者だ。今東横インにいる。飯は相変わらずだが、居心地は悪くない。新しくできた東横インだと聞いて期待してきたが、まったくいつもの内装だった。もう十数年はここで宿をやっているような貫禄。これは東横インしかできないことだろう。

 おっと。ズボンプレスしていたのだった。明日銀座で買物をしてみようと思うのだ。最近はめっきり隣国中国人ばかりだが、それゆえ、品揃えも変わっているかもしれない。魔法使いのやつに土産を買っていってやりたいし、よくいく酒場女の子たちにもいい顔をしたい。

 勇者である俺には特殊能力があった。とある平行世界、なかでも日本という国にえいやと移動できるのだ。

 不思議なことに、日本にやってくると服装が“日本風”に変わっている。革の服上下セットは、気候にあわせてか通気性のよい麻素材のスラックスTシャツに、ドラゴンの胸あては小粋なジャケットになる。

 ホテルから出て街を歩いていると、女子高生こちらを見て手を振った。

 俺こと勇者こちらの世界ではイケメンの部類に入るらしい。まず、身体がいい。ここいらのやつらは戦に出ないので、男でもひょろひょろとしたやつが多いのだ。が、俺はどうだ。なかなかの筋肉を持っていて、やつらのなかでは背が高い。それが女にはよく見えるというわけらしい。

 また、俺はここらでは異国的なビジュアルに写るというのもいいのだろう。故郷では俺に似た男など5,6人はいて、姉によく「あれ、あん市場にもいなかった?」などと言われたものだが、ここでの俺はレアな男なのだ

 浅黒い肌。異国的。銀髪。とっても異国的。てなもんで、女たちは興味津々で俺を見てくる。

 ん? 魔王を倒さないのかって? バカ言えよ、今日は土曜だぜ。勇者週休二日制なのだ

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