こちら勇者だ。今東横インにいる。飯は相変わらずだが、居心地は悪くない。新しくできた東横インだと聞いて期待してきたが、まったくいつもの内装だった。もう十数年はここで宿をやっているような貫禄。これは東横インにしかできないことだろう。
おっと。ズボンをプレスしていたのだった。明日は銀座で買物をしてみようと思うのだ。最近はめっきり隣国の中国人ばかりだが、それゆえ、品揃えも変わっているかもしれない。魔法使いのやつに土産を買っていってやりたいし、よくいく酒場の女の子たちにもいい顔をしたい。
勇者である俺には特殊能力があった。とある平行世界、なかでも日本という国にえいやと移動できるのだ。
不思議なことに、日本にやってくると服装が“日本風”に変わっている。革の服上下セットは、気候にあわせてか通気性のよい麻素材のスラックスとTシャツに、ドラゴンの胸あては小粋なジャケットになる。
ホテルから出て街を歩いていると、女子高生がこちらを見て手を振った。
俺こと勇者はこちらの世界ではイケメンの部類に入るらしい。まず、身体がいい。ここいらのやつらは戦に出ないので、男でもひょろひょろとしたやつが多いのだ。が、俺はどうだ。なかなかの筋肉を持っていて、やつらのなかでは背が高い。それが女にはよく見えるというわけらしい。
また、俺はここらでは異国的なビジュアルに写るというのもいいのだろう。故郷では俺に似た男など5,6人はいて、姉によく「あれ、あんた市場にもいなかった?」などと言われたものだが、ここでの俺はレアな男なのだ。
浅黒い肌。異国的。銀髪。とっても異国的。てなもんで、女たちは興味津々で俺を見てくる。
きのうはおたのしみでしたね
ビジホを旅する男
ハナホジする男に空目