嫁は昔婦人系の病気を患った事があって「できにくいかも〜」と言っていたから、俺たちの間では長らく嫁に原因があると思われていた。
それで、嫁がやっぱり検査を受けてみる言い出して、俺もついでに検査してもらう事になった。
んで、
無かった。
嫁も驚いたし、俺も驚いた。
体外受精は可能だし、嫁はいたって健康体だという事で、子を持つ事が断たれた訳でなかった。
しかしショックだった。
中学生の頃から俺が毎日ティッシュに出していた彼らはあんなにも弱りきっていたのだ。
生殖という動物の根幹が俺にはきちんと備わっていなかったのだ。
偶々21世紀に生きているから、無理矢理生殖できるだけで、俺は野生にいたら子孫を残せない個体だったのだ。
男としての矜持のようなものが、いたく傷つけられたように感じた。
いくら中に出しても妊娠しないとわかった後も、夫婦生活は変わる事なく続いた。俺のせいで自然妊娠は不可能になったのに、嫁は俺を全く責めなかった。変わったことと言えば晩御飯にチーズや煮干しが少し増えたことぐらいだった。変わる事のない生活だった。しかし、それでも射精のたび、俺の弱々しい精子のことが頭をよぎるのを止める事は出来なかった。
それである朝、つい朝食にバナナを頬張る嫁に対して自嘲的になり言ってしまったんだ。「俺のバナナも種無しだぜ?」
すると嫁はしばらくキョトンとして、ちょっと困った顔をして、それから少し笑いながらこう言った。
「いいよね、皮むきやすくて」
仮性包茎
俺んちもオヤジの精子が薄いのが不妊の原因だったよ。 通院のすえに俺ができて産まれた。 まあロクな人生歩んでないから正直種無しのままでいてほしかったがな。