2019-04-16

飯の味がしない

小学校の頃、何を食べても美味しかった

半ドン父親が作った焼きそばが好物だった

外食で新しい味に出会うたび、親に世界感謝する時分だった


中学生の頃、味より量に傾き始めた

部活帰りに寄っては食べる、近所のパフェが美味しかった

身体も胃袋も大きくなって、幸せ詰まる時分だった


高校生の頃、さらに量へと傾倒した

たらふく入る胃袋抱えて、弁当学食蹂躙し尽くした

受験の前に先生の奢ってくれた立ち食い蕎麦

少し物足りなかったけれど、不思議身体が暖かくなって

今までの中で一番うまい蕎麦だった


大学生の頃、食は形式的ものになった

ただ急いで腹を満たせば良い、それだけの行為に成り果てた

9時から2時まで研究に没頭して、論文が書き終わった時にはもはや味覚なんて消え去っていて

だけれどここを抜ければ、就職できれば

またすぐに飯の味が戻るものだと思っていた


そうして、社会人になって、飯の味がしない

大学生の頃よりも総合的には楽になって

研修の中でそれなりの成績と顔を保っているのに

寮の夕飯、飲み会焼き鳥、好きだった店の天津飯

何を食べていても、砂利と変わらない


社会人になれば美味しいものを食べて笑えるあの頃に、戻れると思っていたのに

のしない飯を食む生活に、囚われるなんて微塵も思っていなかったのに

嗚呼今日もまた、飯の味がしない

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