https://www.asahi.com/articles/ASM2W4FSFM2WUTIL01J.html
うーむ。これは医師免許剥奪ものだな。これとちょっと周辺状況は違うんだが、俺の体験した話を書いておく。
もう10年以上前、あるバーで飲んでいたときのこと。俺と、このバーでちょくちょく出喰わす若い医師しか客がいなかったのだが、二人連れの女性が入ってきた。片方はちょっとキツめでしっかりめ、20代後半という感じ、もう片方は丁度アナウンサーの田中みな実(が演じてる?)みたいな男受けの良いブリブリっとした感じの20代前半。
20代後半が俺の隣に、田中風が医師の隣に座った。このバーはいわゆるオーセンティック・バーで、カジュアルに話して騒いで盛り上がって、とかいう店ではないのだが、田中風はすぐに医師に話しかけ、医師の方もまんざらでない様子だった。俺はうるさいのが厭だったので、ぽつりぽつりと20代後半と話していた。
医師は自分の仕事のことを話していた。いやー夜眠りもせずに徘徊したり、暴れたり、まあ色々あるんだよねー、みたいな話ね。
「でさあ、そういうときにはこんなの出すんだよね」
と、医師は懐から錠剤のパウチを取り出して、田中風の手に取らせて見せていた。
「べ……べげたみんびー?」
薬の名前を田中風が読んでいるのが耳に入った。おいおい、それマズいだろう。このベゲタミンBって薬、2年半程前から使われなくなったのだが、クロルプロマジン、プロメタジン、フェノバルビタールのカクテルで、普通の人が飲んだら二日位は寝たまんまになるという代物だ。俺は自分がうつになったことがあって、そのときにこの手の向精神薬を徹底的に調べていたので知っていたんだが、医療従事者以外だとそういう経緯のある奴かクスリマニアでなければ分からんだろうが。
そうしたら、田中風……やおら錠剤を取り出すと口に放り込んだのだ。俺が田中風と薬をガン見していたので、20代後半もこれを見ていた。俺が「アカン」と言った刹那、20代後半は田中風の首根っこを掴んでトイレに引き摺っていった。
しばらくして戻ってきた20代後半、俺に、
「口に手突っ込んで吐かせました。飲んではいないと思うけど」
「まあ……でも酒飲んでることもあるから、家に連れてってやった方がいいと思うよ」
と言うと、20代後半は俺に礼を言い(いや、礼を言われるようなことは何もしていないんだが)、田中風を連れて店を出たのだった。
今回の被害者は純然たる被害者だと思うんだけど、こういう女性もいるんだよな。何故わざわざ自分からいっちゃうのか分からないんだが……あの田中風、実は深い深い闇を抱えていたのかもしれない。