ベランダの片隅
日々の生活では、自殺をする人間を目の当たりにすることは基本的にない
自ら命を絶つ人間は、多くが人目につかず死んでいく
街ですれ違う人々の一体どれほどが自殺願望を持っているのだろうか
人の心は目に見えない
仲間意識的に、そう思うことで救われる部分もある
死が蔓延しすぎている
埃の積もった本棚の片隅にも、しばらく干していない布団にも、少し前に着なくなったコートのポケットにも、死が存在しているように思えてしまう
すぐに手に入れることができる距離に存在しているように錯覚してしまう
それを手に取るということを徐々に恐れなくなる
少しずつ手を伸ばして、あるときハッとして手を引っ込める
この行為を繰り返す
そのうちに、無意識のままにこの手で掴んでしまいたいと諦めに似た感情が沸き起こる
それに触れることを我慢して、生きてきた
それでも、もう限界だと思ったら、きっと拾ってしまう自分が確かに内在している