英語の答案返しをしていた。夏休みまであと1週間を切り、教室はどこかふわついた雰囲気が漂っている。各々夏にどこに行く、何をするだの小声で話していた。
担任は、どこかずれている。思ったことを言語化するのが苦手で言い間違えや方言が多々混じる。今回も試験の成績が悪いから夏休みしっかり勉強しろといったニュアンスのことを茶化しながら聞くのだろうなと思った。
「今朝東山君が亡くなりました。」
亡くなるとは何だろうか。明日も明後日も永遠に会えないし、話せない、何かを共有できなくなることなのか。
そんなはずはなかった。
昨日、東山は国語の試験に遅れて0点になったことを冗談めかして嘆いていた。
校内で1番厳しい先生の授業中、ムカデが思わぬところから出てきて一緒に必死になって笑いを堪えていた。
入学当初、人見知りで誰にも話しかけられずどこか距離をおいていた私に声をかけてくれた。
担任は交通事故だと言った。葬儀の詳細は分かりしだり連絡すると言った。気分が悪い人は早退していいと言った。
「それとついでに言っとくけど、レポート出してない人多いから早く出してね。」
課題提出の催促で話は終わった。
今日というのは昨日の延長線で等しく全てに与えられるものだと思っていた。
学生時代に友人が(自分の責任ではない)事故で亡くなったけど、最初は実感がわかなかったなあ、混乱して涙も出なかった お葬式に参列して遺影を仰ぎ見たときにはじめて泣いた