俺の住んでた田舎は(もうあそこにはすまないだろう)人口も2万人くらいの中途半端な田舎だ。スーパーは小さいのが数件国道沿いにあるだけ。近くにある駅は2量編成の電車しか来ない。コンビニは歩いて15分のところにあった。最寄り駅は歩いて10分。
高校は1時間30分くらいかけて通った。電車とバスで。こんなとこ出たいと思ったから高校では勉強したし、部活はしないかわりに勉強だけはやったから行きたい大学には合格した。今は都会暮らしだ。ほんとにあんなところに住んでたのが今となっては信じられない。都会っていうのもあまり手放しで好きになれない。結局は俺と同じようなのが集まってるだけな感じがするから。同じ大学のやつもみんな地方からきてるし。北海道のほんとにどこ?っていうところから来てるやつを見たときは、なんだ日本って広いんだなあと思った。でも都会って人が多いだけで狭い。
親にはたまに電話するだけ。学費は奨学金だ。それでなんとかやっていける。出るときに最低限のお金もらったので週5くらいの飲食のバイトで生活してる。
地元から出るときに新幹線に久しぶりに乗った。新幹線はいい。地元の電車はいつもガタガタしてぐわんぐわん唸っててうるさかったから。そのくせにのろまな電車だった。あんな電車ももうのらなくていい。都会は電車も便利だ。
都会の電車は加速が違う。
ここまではどうでもいい誰も気にしない話だ。
この間、コンビニいったんだよ。そしたらなんか顔見たことあるよなっていう子がいた。もしかしたら同じ高校のやつかなと思って顔をみたらそうらしかった。そいつの進路はしらない。一度だけ同じクラスになって少し話してそれからは何もない。だけど顔だけ印象に残ってる。なんでだろうと思ってたら新幹線で寝てたときに夢に出てきたからだ。それからそいつの顔が気になった時があった。何回かそのコンビニに行って声とかも聞いた。間違いない。向こうは気付いてない。話しかけようかなと思うけど別にいいかなとも思ってた。そのままそのコンビニには行かなくなった。
でこの前、大学で教室移動してたらそいつに似た顔のやつを見かけたんだよね。似てるだけだともった。その時は。でも昨日だ。後ろから名前を呼ばれたんだよ。俺の名前を呼ぶのなんか数人しかいないし、しかも男だけのはずだけど女の声だった。振り返るとそいつだった。コンビニでも気づいてたらしい。同じ高校だったよねだって。そんなこと言われても。俺は知らないふりをした。