やあ、元気かい?
僕は君が生まれる何年も前に生きていて、死んだ者だ。
どうだい?
ワープできたり、生まれつきのハンディを克服できるバイオテクノロジーが存在したり、
もうすぐ不老不死も実現できそう?
そうかい…。
僕はその恩恵を何一つ受けることはできなかったけど、
今の君たちが幸せならそれで何よりだ。
でも、まだ何か悩んでるんじゃないのかな?
例えば人間関係とか、自分の存在価値への承認とか、能力の限界とか、
怒り、愛憎、焦り、不安、孤独、憎悪…まだ人間の原始から来る感情に悩まされているんじゃないのかい?
実は、未だに戦争をしている地域がどこかにあるんじゃないのかい?
どこかで飢えて抵抗することもできずに命を落とす子どもたちが…いるんじゃないのかい?
そうかい…。
僕が思っていたとおり、未来になっても人の原罪は償え切れるものではなかったようだ。
僕は君に謝る。
すまなかったと。
遠い過去に生きる僕たちが人類の悪夢を終わらせることができなかったことを。
テクノロジーの発展に尽力することはできたが、
幸福の手助けには遠く及ばなかったということを。
たった一人の人間を幸せにすることも難しいままだということを…。
謝罪と同時に願いを送らせてほしい。
どうか君の時代では、人々が憎しみで争うことがないように。
どうか、お互いがお互いを思いやり尊厳を持って接し合うように。
今の僕ではできなかったことを未来の君たちに託す。
どうか君は失敗しないでおくれ。
僕の希望を叶えて見せてくれ……。