都内の楽器店でギターピックを買った時、レジを打ってくれた店員が味わい深い人だった。
アラフォーくらいのきれいな女性なんだけど、髪が薄い。頭皮が普通に見えちゃうくらい。
接客は親切丁寧で笑顔を欠かさないし、俺が差し出した右手を両手で包み込むようにお釣りを渡してくれた。
この人の人生はどんなものだったんだろう。なにがどうして楽器店のレジを打っているのだ?
努力しても売れず、男性関係でつらい経験をし、バンドは諦めた。失意の就職だったのだろう。
それでも音楽のことは好きだし、音楽を愛している人のことが好き。だから接客は親切丁寧。自分の過去を肯定する意味もあるのだろう。
実際の彼女の人生はこんなものではないかもしれん。短大を卒業してすぐ就職したのかもしれん。髪が薄いのはストレスと無縁なのかもしれん。
でも、こんな妄想をしたくなるほど興味が湧く人だった。
バックストーリーが妄想のみでまったく語られていないばかりか、人の少ない深夜にセルクマとか寂しすぎる