2015-04-10

平岡さんのこと

平岡さんが先月末で辞めた。その少し前に打ち明けられて理由を聞いたら「興味がなくなった」と短い答えを貰った。2年間働いた結果がそれだったのだけれど、辞意を伝えるといろいろ止められたが、給料をあげれば残ると言ったらあっさり引いたそうだ。

平岡さんはすごい人だった。一緒に働いた2年間、僕はすごいと思い続けた。プレゼンテーションサーバロジックサーバデータベース、経路のアライアンンスとすべてのチューニングが行え、Beanだってばんばん修正していた。ドキュメントばんばんつくって公開していた。マネージャが聞きかじってきた新情報はすでに実装までこなし、たまーに営業が持ってくるドラフト段階のキャリア案件実装だって仕様書リファレンス、サンプルから作り上げていた。「絵と音がつくれないからなー、これくらいはしないとね」と笑った顔を思い出す。僕がしらないところでまだまだすごかったのだろうと想像できるくらいすごい人だった。

今月から平岡さんがいなくなった。

まずマネージャが「平岡ならこれくらいできたぞ」と怒っているのをよく見かける。営業から平岡さんなら次の日の午前中にはもらえたんですが……」と上司にいいよる。公開サーバチューニングだってインフラ部門担当者が2人がかりで今週今日までかかってまだ解決していない。平岡さんならもっとはやく解決できたんじゃないかな、と思っている。言わないけど。

平岡さんが入社したころはみんながすごいとおもっていたんだろう。そのうちみんなが平岡さんに「慣れて」しまう。そして平岡さんを想定して計画を考えるようになってしまったのだろう。あれほどすごい人を「最低限:平岡」という基準にしてしまったのだ。結局、烏合の衆が残った。たばになっても平岡さんには届かない。

計画を左右するほどのすごい人を、どれくらいの給料で使っていたのだろう。でも平岡さんが辞めた理由給料問題ではなく「興味がなくなった」のだという。本当に技術好きな人給料で満足を判断しないのだ、とよく見かける言葉意味がよくわかった。

会社平岡さんを満足させ続けなければならなかっただ。いや、満足できないくらいあたらしいもの提供し続けなければならなかったのだ。かわりに給料を出すならまだしも、その更改を願ったらあっさり彼を手放してしまった。どれほど釣り合わない値段で平岡さんを使っていたのか想像しているのだろうか。

平岡さんのように「都合のいい人」と同意関係が構築できれば、それは幸せなのかもしれない。だけれど、もし、居る理由がなくなったらあっさり興味のある場所へと移動してしまうのだろう。無邪気に。そして平岡さんなきあとも、会社は続く。都合のよさはもうない。あれほどの計画を左右する人を手放してしまってもまだ、平岡さんを基準として考えることになれてしまった自分理解もせずに。

今日平岡さんはなにか愉しい経験があったのだろうか。それを羨ましいと思う。

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