右とか左とか、妙なワードで盛り上がってるなと思った。
教室を覗き込めば、友人のタカハシ(ばっちり偽名です。ご安心を)とYと、それからタカハシの悪友3人。
「よーッス。何の話してんの?」と軽く手を振れば、タカハシが大笑いしながら「おう、お前は右と左どっちだ?」って訊いてくる。
いや、質問に質問でリターンは反則でしょ。と思いながらも、右か左か。考える。利き手の話だろうか?
「……左?」
利き手の話で、いいんだろうか。戸惑いながらも答えると、タカハシ御一行の笑いがだいばくはつ。「左!」「左ですってよ奥様!」「もぉヤダー!」とかお互い肩を叩いて笑い転げてはる。何故オカマ化した。
その後は何度尋ねても笑うばっかりで、何のことだかは教えてもらえなかった。
ので、帰り道、方向が一緒のYに電車内で疑問をぶつける。
(どうでも良いけど、セージテキシソーを並び替えると「ソーセージ」と「ステーキ」になるよ。)
(嘘だよ。)
確か「俺は断然右」とか「んー、その時々によるかな……」って言ってましたよね。
「断然右」はわかりますよ、ガッツリ右ってことでしょ。バリバリの右翼。断固として右翼。
じゃあ「その時々による」って何!? 「今日は左翼な気分かなぁ」とか、そんなフラフラしてていいの!?
そもそも放課後、政治的思想について熱く語れちゃう男子高校生って、何それ。怖ッ。
うわードン引き……って顔になってたんだと思う。Yは愉快そうに笑っていた。
私「待って! じゃあ私、さっきので左翼だと思われたってこと!?」
Y「そうなるね」
私「うわーッ! メロス政治わかんないのに勝手に左翼にされちまったーッ!」
Y「いいんじゃん、王様殴りに行くし」
一応、聞いておいた方が今後の為に良いかもしれないと思った。セージテキシソーは、きっとそれなりに普段の生活にも絡んでくるんだろうし、友達としては下手に地雷を踏みたくない。
「Yはどっちなの?」
吊り革を掴んで電車に揺られるYは、ちょうど西日に照らされた美しい川を眺めていた。眩しそうに目を細めながら、うっすらと微笑む。
「どっちでもいいんだけどね。じゃあ俺も一緒、左にしとこう」
とても綺麗な横顔を、していた。
翌日。タカハシから「ヨッ、チンポジ左派! 元気にチンポジってるか!」などと史上最低の挨拶を頂戴し、全てを理解した私は怒れること阿修羅の如し。
「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のYを除かなければならぬと決意した。
メロスにはチンポジがわからぬ。メロスは、普通の女子高生である。口笛を吹き、友と遊んで暮して来た。
「俺"も"今日は左にしてるよ」などと爽やかな笑顔で参戦してくるセリヌンティウス(Y)の頬を、メロスは腕に唸りをつけて殴った。
君が! 「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ」と言うまで! 殴るのを! やめない!!
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