2014-07-16

とある本の内容について

最近話題になっている本の中に、気になる記述があった。

その本は、ある人(以降、Zさんとする)の幼少期のトラウマテーマとしていて、そのトラウマ記憶は長らく忘却されていたが、催眠療法によって蘇ったのだという。

Zさんは、あることがきっかけで催眠療法士と知り合うことになり、その催眠療法士の「カウンセリング」を受けることになった。(もともとZさんには、精神的に不安定なところがあったという。)

その「カウンセリング」において、Zさんの語りをしばらく聞いた後、その催眠療法士は、Zさんに小さいころに家で性的いたずらを受けたことがないかどうか尋ねたという。

そして、Zさんは「お父さんにそんなことをされるわけがないじゃないですか」と返すと、催眠療法士は「誰がお父さんのことだと言いましたか?」と言い、それによってZさんは「お父さんに性的いたずらをされていたかもしれない」という疑惑を持つことになった。

ここに書かれているのは、非常に単純な、そして単純であるがゆえに悪質な心理操作だ。

男の兄弟がいない環境において、Zさんにとって身近な異性は父親となる。

性的いたずら」という言葉から想起されるのは、大抵の場合は異性からのいたずらであろうから、家での性的いたずらという言葉から父親のことを連想するのは、ごく当たり前のことだろう。

しかし、催眠療法士はここで心理操作テクニックを使う。

「誰がお父さんのことだと言いましたか?」と返すことによって、父親の他にも性的いたずらを家庭内で行いうる主体があたか存在するかのようにほのめかすのだ。(本当はそんな主体がいる可能性はごくわずであるにもかかわらず。)

そして、このような言葉を言うことで、Zさんは「他にもあり得たかもしれない選択肢の中から私は父親と答えたのだから性的いたずらを行ったのは父親に違いない」と思うようになる。

でもこれは勘違いにすぎない。

状況的にいって「父親」を想起して当然であるにもかかわらず、この催眠療法士は、他の選択肢があるかのように見せかけることで、Zさんの言質を「無意識的な」選択なのだと誘導している。

その結果、行き着くところが虚偽記憶の形成だ。

その本は、性的虐待というテーマセンセーショナルさもあって話題になっているが、その催眠療法士が現れて以降の下りは相当に怪しい。

セクシュアルマイノリティコミュニティが、怪しげな心理療法士・催眠療法士の食い物にされないことを祈る。

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