数年前の話。
運転中、前方の車両が交差点に進入しかけ、黄色信号に変わりかけのタイミングだった為か一時停止して、そしてまた前進して、また停止した。
車列は十分以上に渡りおよそ平均時速60km位の速さで流れていて、真後ろの車両を運転していた自分は疲れもあり、とっさの対応が遅れた。
追突を避ける為に無人の歩道に突っ込もうとしたものの間に合わず、結局は前方車両の左後方に追突。
その時はただ、相手ドライバーにも駆けつけてきた警察にもただ平謝りするばかりで、状況のおかしさにも気付かなかったのだが。
相手も無傷で、示談で済んだことにも安堵するばかりだったが。
事故後しばらくして改めて当時を振り返り、その異常性に気付いた。
警察の到着が異常に早かった事。
ドライバーの若い女性と警察官二人、両者に共通する、何かを飲み込んでいるかのような態度。
警察の不自然な、“事実よりも20メートル後方よりブレーキを踏んだ事にさせよう”推し。
まあ要するに、
前方車両が止まったり進んだり止まったりと変な挙動を繰り返していたのは、自分から見て死角にあたる左斜め前方に“アレ”がいたかららしい。
“アレの存在を感知した事が前方車両の妙な挙動を引き起こした”と理解していたから、警察も被害者もそのどちらも、事故ったことに対して納得気味だった…という事らしい。
自分ひとりがアレの存在に気付いていなかったわけだ。で、これ幸いと何も説明もせずに事故処理を進めたのだろう。
ブレーキを早めに踏んだ事にさせたのも、アレを事故原因と関連付けられる線を断ち切っておきたかったから、なのだろうか?
まあどちらにしても警察はアレについて説明する義務もないし、仮に説明されたところでこちらの過失割合が変わるわけでもない。
――と、こういう書き方をするといかにも事故原因が心霊現象か何かに思えるだろうが全然そんな事はなくて、
数ヵ月後、また同じ場所で同じアレをしていたためにようやく気付く事ができた。