一緒に飲みに行ったのも白○屋だったな。
お前はそういって笑ってたっけな。
お前は家電メーカー就職して欧米越えるんだ胸を張っていたよな。
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。
あれから二十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
家族で楽しく団欒して家庭料理食べてる年齢じゃないのか、俺たちは?
でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「2次会行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前の勤めてる家電メーカー、半導体部門切り離されて違う会社と合併したの聞いたよ。選択と集中とやらでリストラしてるのも聞いたよ。
リストラされて四十過ぎて仕事もなくて、女房と子供逃げられて、年収が三分の一になって、それでも必死に卑屈になってタクシー運転手続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
二十年前と同じ白○屋で、バブル時代の栄光なんて語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。