2012-01-02

よく考えたら怖い話

さきほどまで、

http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/4059007.html

サイトを読んでたら、俺が経験した怖い話を思い出した。


学生時代に住んでいたアパートは壁が薄くて、時々隣の人の声やテレビの音が聞こえた。

隣には同じ大学の2年先輩が住んでいたが、まったく面識がなく、一度も話したことがない。


ところが、ある日いきなりドアを蹴られて、

「うるせえぞコラ!」

と怒鳴られたことがある。


慌てて外に出ると、その先輩がいて、俺に殴りかかろうとしたので、慌てて羽交い絞めにした。

高校の頃に柔道をしていたから、ひょろっとした相手はそれほど怖くなく、羽交い締めにしながら、

ちょっと、落ち着きましょうよ」

と何度か繰り返す。

「てめえの家のテレビがうるさいんだよ、コラ」

と怒鳴るので、

「待ってください。うちにはテレビはありませんよ。ほら」

と部屋の中を見せた。


「でも音がしたから」

「それ、たぶん他の部屋ですよ。俺じゃないですよ」

と説明すると、ようやく落ち着いて納得したので、

「ここはそんなに壁が厚くないから、どこかの部屋の騒音がそちらに伝わったのだと思います

 ただ、間違って騒音を出すときもこれからあると思うので、そういう時は俺に注意してください」

と低姿勢で俺はひたすら謝った。

ドアには彼の靴の跡がしっかりとこびりついていた。


それから一週間後に、彼が自分のドアの前に座ってタバコを吸っているのを見かけた。

俺はフレンドリーに彼に話しかけた。

最近、俺は騒音出してませんか?」

彼は半笑いで俺に向かってクビをふる。

なぜあれほど凶暴化したのか分からないほど、穏やかだった。


それは夏だったのだが、それから一ヶ月ほどした日曜日、彼の部屋から

ありがとうございます」「ありがとうございます

という大声が聞こえてきた。

(ああ、就職活動発声練習でもしているのだろう)

と考えて、放っといた。


ところが、それが数時間続いた。

さすがにおかしいだろうと思ってそいつの部屋のドアをそいつと同じように蹴り上げてやろうかと思っていたところ、

「ありがごうございます

という怒鳴り声に混じって、

「すいませんでした!」

「許してください!」

という言葉とすすり泣きが交じるようになり、やがて、

「許してください!」

という大声だけが繰り返されるようになった。


その頃には道路を挟んだクリーニング屋のオバサンまで出てきて、そいつの部屋の様子を探っている。

俺も

「どうしたんでしょうね?」

と彼らとコソコソと話しながら、様子をうかがう。

気味が悪くて彼の部屋のドアを蹴り上げることは止めることにした。

夕方までその大声は続いた。


それから数週間して、その先輩は急に引っ越ししまった。

学校に行く前に、4トントラックが彼の部屋から荷物を片付けているのを見かけたが、その時は気にもとめず。

授業を終えて帰宅した所、母親らしき人が、泣きながら部屋に一人で掃除機をかけていたのが見えた。

彼女に軽く挨拶したが、息子さんのことを訊かずじまいだった。


当時は彼のことを、(就職活動がうまくいかずに、ノイローゼになったんだろう)

と考えていたのだけれど、今思えば、統合失調症を発症してしまた人だったのだろうと思う。

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