こう言うことを書くと、どこからともなく「今まで情報収集が足りなかった」とか「原発の電力を享受している人間に言う資格はない」とか言う声が聞こえる
というのは、俺の働いている業界はそんな理屈では動いていないからだ。大抵の業界でも同様じゃないだろうか?
俺はIT業界で働いている。お客さんの要求にしたがって特注のソフトを創り上げる、いわゆるよくある受注型のSIの仕事だ。
そういうお客さんに新しいソフトを導入してもらうように提案することもある。
例えば今まで特注のハード上でしか動かないソフトをWindowsの搭載されたPCで動くソフトに変更するとか。
そうすると「ソフトの開発が迅速になる」とかのメリットがあるけど、「コンピューターウィルスにかかる心配がある」とかのデメリットもある。
いわゆるトレードオフっていうやつだ。
こういう時、提案時にはデメリットには必ず対策がありますよって説明する。
「コンピューターウィルスが心配なら、ウィルス対策ソフトっていうものがあります。これを導入したらいいですよ」とか言って。
あと、メリットを享受しないと損しますよ、という情報を出すこともある。
「他の会社はPCで動くソフトを導入しています。最新ソフトを導入できないと他社に乗り遅れますよ」とか言って。
で、そうやって導入した新しいソフトの環境だけど、当然ウィルス対策ソフトも万全じゃないので、対策ソフトに追いつかないウィルスにやられたりする。
それはそういう物なので、深刻度に応じて様々な復旧をする。当然俺らのチームが復旧作業をやる。
(PCの電源が切れるくらいなら楽だけど、情報を外に漏らすものだと厳しいなあ・・・)
だけど、そういう物にやられたとき、こんな言い訳をしたりはしないだろう
「あなた方の情報収集が不足しているからだ」「今まで最新ソフトの恩恵をうけていたのだから、文句をいう資格はない」
優しいお客さんなら「想定外だから仕方ありませんね。まずは復旧を考えましょう」と言ってくれるだろうけど
厳しいお客さんなら「対策ソフトがあるから大丈夫と言ったはずじゃないか、説明と違う!」と言うだろう。
でも、その厳しいお客さんを理不尽だとは思わない。提案したのは俺らだし。お客さんにITの知識がないことを承知で売ったんだし。
今回の原発の件も、お客さんである電力消費者がよく知らなくて、東電の説明を鵜呑みにしちゃったのは悪くない。
売り側の方が知識がいっぱいある取引では、よくあることだ。
だから、もっと「騙された」って言っていい。
「僕の仕事は東電のやってることと同じでーす」という自白? 今後はそういう仕事のやり方自体が批判され始めると思うぞ。