俺は携帯電話が嫌いだ。
俺が子供の頃は、電話といえば家庭の固定電話か、街中の公衆電話しかなかった。当時も車載の移動式電話はあったそうだが、子供の俺には関係がなかった。
世の中で携帯電話が広く使われ出したのは、俺が高校生ぐらいの頃だったと思う。しかしその頃から俺は携帯電話が嫌いだった。
電話ボックスの中でもない屋外で通話する姿はどこか滑稽に見えたし、交友関係の狭い俺は頻繁に人と連絡を取る必要性もなく、むしろ一人で過ごす時間の邪魔をされるのが嫌だった。
そのため俺は大学生になっても大学院生になっても携帯電話を持つことがなかった。
やがて就職活動の時期になり、さすがに働く上では必要だろうと思い、ついに携帯電話の契約をした。
しかし初めて触る携帯電話は俺にとってとても使いづらいものだった。
まず電話の取り方も切り方もロクに分からない。最初のうちは電話を取れずに切ってしまうこともよくあった。
そして子供の頃からPCのキーボードに慣れ親しんだ俺に携帯電話の文字入力は辛すぎた。
同じ文章を打ち込むにも、キーボードより携帯電話の方が30倍は時間がかかって話にならない。
小学生の頃からPCでMS-DOSのコマンドを使いこなしてきた俺だったが、携帯電話の操作となるとまったく頭が働かない。
PCでできたことは全然できず、操作法もよく分からず、より一層携帯電話が嫌いになってしまった。
俺にとって一番画期的だったのはQWERTY入力ができるようになったことで、文字入力の負荷はかなり軽減されたが、それでも嫌いなことには変わりがなかった。
スマホに乗り換えてから10年、多少は使いこなせるようにもなったが、
今でも俺はゲームもやらず、動画も見ず、本当に通話とメールチェックぐらいにしかスマホを使っていない。
それらもほとんど来ないので、スマホをチェックするのも1週間に1度で十分だったりする。
仕事も趣味もPCですべて事足りるので、スマホを持っている意味はほとんど何もない。
しかし最近の世の中は、牛丼を注文するにもスマホを使うという意味のわからん世界になってきていて、DOSコマンドで思考する人間にはいよいよ生きづらくなってきている。
俺はまだ40代だが、40代でこれなら70代になったらどうなってしまうんだという気はしている。
俺が70代になる頃までには、固定電話が携帯電話に置き換わるぐらいの技術革新があと1~2回はあるだろう。その頃にはもう携帯電話すら別の何かに置き換わっているのかもしれない。
しかしそれでも、俺の携帯電話嫌いは生涯変わらないだろうと思う。
俺は携帯電話を使わない生き方を生涯貫くのだ。そして語り継いでいこう。電話といえば、固定電話か公衆電話だという時代があったのだと。自分はその時代の最後の語り部なのだと。
時代に適応できなかったおじさんの愚痴って感じ