2022-10-16

四畳半タイムマシンブルース』は最高のファンムービーであった

とても良かった。

うん、本当にいい映画であった。

映画スペクタクルはそんなにないものの、ファンとして見たかったものが十二分に見れたので、非常に満足度が高い。

作品概要簡単説明すると、森見登美彦原作TVアニメ四畳半神話大系』の世界観上田誠戯曲サマータイムマシン・ブルース』をやったら……というものである

上田誠森見登美彦作品映像化で何度も脚本を務めてきたこからまれた奇妙な企画だが、「キャラクターが魅力的な四畳半神話大系物語構成が秀逸なサマータイムマシン・ブルースを掛け合わせたら最高なものになるんじゃね?」という、同人誌的で短絡的な発想で組まれたように見える計算式が、なんとまあ見事に成立していた。

とはいえ、『サマータイムマシン・ブルース』を見ていたらある程度話の筋がわかってしまうので、一番楽しめるのは『四畳半神話大系』視聴済みで『サマータイムマシン・ブルース』未見の人かもしれない。

まあ、『四畳半神話大系』についても、視聴済みの人は知ってのとおり1話1話独立したパラレルワールドで、今作も別に「続編」ってわけじゃなくパラレルワールドなので、全くの未見でも見られるものになってるのだけれど。

とにかく、キャラクターが魅力的で愛おしい映画であった。

四畳半神話大系』では憎たらしい役回りだった城ヶ崎先輩や相島先輩も、今作はキャラはそのままなのになんだかとても愛おしく思えた。

とりわけ明石さんが魅力的であった。元々魅力的なひとではあったのだが、今作で最高のヒロインになって帰ってきた。12年ぶりに惚れ直した。

四畳半神話大系』は「私」と「小津」の物語で、明石さんはある種立ち位置あやふやヒロインであったのだが、今作は明確に「私」と「明石さん」の関係スポットが当たっている。

そして、それに合わせるように今作は演出方向性を少しだけ変えている。世界観を崩さないまま。

四畳半神話大系』では、登場人物の心情については割とさらっとした描写であったのだが、今作では少しだけウェットに心情が描写されている場面がある。

登場人物ドタバタしたコメディが繰り広げられる中に時折「青春」の甘酸っぱい香りが漂う。

その描写が、見終わってからじわじわと効いてきて、後になるほど愛おしさが増していく。

四畳半神話大系』にしても『夜は短し歩けよ乙女』にしても、いわゆる腐れ大学生モノは「性欲」的な表現何気なく散りばめられていたのだけれど、今作はそこが抑えめなのも甘酸っぱさに拍車をかけていると思う。

あと、「ブルース」の名を冠しているだけあって、「青」が印象的な映画でもあった。

その「青」は、黄昏時の青である日没を迎える前のほんの一瞬の青。四畳半紀の終わりの青。

エンドロール流れる主題歌出町柳パラレルユニバース」では、こう歌っている。

「少しずつ影が背を伸ばしても まだまだ終わりじゃないさ 今日

うん、本当にいい映画であった。

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