中堅漫画家だけど、今日偶然TLに昔アシスタントに通っていた先生の漫画が流れて来た。
先生と言っても年が近く、先生は東京出身で実家暮らしで親が金持ちで文化的で本人も有名な美大を出てて、自分と違って何もかもに恵まれた人だった。
共通の担当編集者にいつも、「年が近いのに〇〇先生と君は雲泥の差だね」と冗談交じりにsageられていた。
編集者からも、先生の親や兄弟からも、先生本人からも、何かあると説教されたり、見下されたり、嘲笑されたり、それが当然だった。
地方出身の高卒でバイトしながらアシスタントして自分の漫画もなかなか描く時間も取れなくて、自分は底辺の人間なんだなと思ってた。
生まれから何もかも違っていて、一生こういう人には環境も才能も何もかも敵わないんだなと思ってた。年が近いせいで自分の伸びしろのせいにもできなかった。
あの頃は息苦しくて死にたくて死にたくて仕方なかった。
誰も自分を肯定してくれる人間がいない。それだけなら耐えられたが、漫画で関わる人間みんなに自分は底辺の人間なんだと扱われ思い知らされるのが本当に辛かった。
それが、15年も経って久しぶりに見ると、別に先生は未だに売れてる作家ではないし、よく見ると大して絵も上手くないと気づいた。
当時俺はデビューすらしてなかったから、歳が近い人が連載持ってるだけで神だと思ってた。
俺のフォロワーの10分の1しかいない。書籍の売り上げはもっと差があると思う。
というか超マイナー雑誌ですら打ち切りを何度か食らってて、これ食えてるのか、というレベルだった。
あの頃は期待の超新星現る!みたいに編集部から超特別扱いされてたのに。
SNSで世界が広くなったらあの絶対的な殿上人みたいだった先生ってこんなもんだったんだとびっくりした。
おれのことをいつも馬鹿にしてた編集者は問題行動を起こして異動になり、最終的に出版社を辞めていた。
というか、その雑誌も廃刊になっていた。結局生き残ったの俺だけじゃねえか。
あの頃絶対的に見えてた大人たち何だったんだろう…と気が遠くなった。
先生とアシスタントしかいない狭い仕事部屋。もうすぐ廃刊になるマイナー雑誌の終わってる編集部。