■サマータイム実現に必要なのはコンピュータの設定変更なのか

• DSTとサマータイムはどちらも正式名称である。アメリカ人は略語が好きなので堅苦しくDSTと名付けただけのことである。

• コンピュータの設定変更は必要ない。時計は協定世界時または日本標準時で持てばよい。

• 代わりに、コンピュータは全面的な改造が必要である。これは事務処理用のパソコンに学術計算機器にも留まらず、コピー機やFAX、インターホン、ガスメーターなど壁に埋め込まれた機器を含む、ほとんどありとあらゆる電子機器を含む。設計図や工具が散逸するなど改造が不可能な場合は買い替えが必要である。買い替えは少なくとも事業所単位で一度に完全に行わなければならない。改造または買い替えていない機器ではサマータイム実施後の書類を一切取り扱ってはいけない。

• 事務処理その他業務用のパソコンについては、Windows 7搭載機は全面的に廃棄する必要がある。Windows 7では将来にわたってサマータイムで書かれた書類の時刻を取り違える可能性が高く、金銭的リスクが発生する。

• 改造にはある試算によれば4年程度が必要である。買い替えには少なくとも改造された機器が完成してから3年程度が必要である。完成するまでには数年を要し、国内の全機器が対応完了するまでには10年程度を見込むとよいと思われる。

• 法、安全、手続き的な取扱いの不徹底がまた問題である。ある法や規則では日数、ある法や規則では時間で指定されている場合、2時間のサマータイム実施中に発生した事象の取り扱いが矛盾しうる。これは法学や工学を含む幅広い分野で議論と合意と多数の法改正が必要となるもので、書類の手直しや上にあげた改造はこの合意が形成されるまでは完了しえない。

• ただし、サマータイムの実施不可能とは、安全な実施の可能性がないというものであり、法が可決不可能という意味ではない。過労死に留まらずサマータイム強行による労働災害、機械の誤作動による火災や爆発などの事故、急な生活の変更などによる労働非労働を問わない民間人の死者を含む傷病者発生を受け入れるならば、サマータイムの強行は可能である。これはジンバブエで通貨を永遠に切り上げ続けることが可能だとか、竹槍で戦略爆撃機を攻撃しまた九十九里浜に大要塞を築き上陸する米軍を迎え撃つことが国語的に可能であるといったことと同種の問題である。

• サマータイムによる死者や傷病者、経済の混乱を景気拡大が正当化するのであれば、サマータイムを実行することには意味がある。まずサマータイム決行の猶予により無辜の一般市民への被害がどう変化するか推計する必要がある。

• サマータイム実施によって引き起こされる死や事故の発生、金銭的損失と社会の混乱による日本の衰退は、実施によって期待されるわずかな経済効果を大きく上回り、法制化は到底正当化し得ない愚策であるというのは、ほぼ暗黙の了解となっている。

• 従ってサマータイム法制化は諦められるべきものである。

• なお、一部でサマータイム実施によりオリンピックの諸行事が繰り上げられるのではないかという憶測が広がっているが、これら諸行事は国際的な調停で決められているもので、サマータイムによって新しい日本時間に追従するものではなく、標準時を早めた量と同じだけ後ろに移動し、実施しなかった場合と変わらず行われることがほぼ確実であるものである。

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