「子なし夫婦は結婚制度へフリーライドしているのではないか?」という主張には前々からもやもやしていたが、ある程度整理できたので書いてみる。
まず、結婚制度の目的が「子作り」であると仮定する。ここで言う子作りとは性行為及び出産を言うので、里親・養子縁組は含めない。制度の目的が「子育て」であるなら議論の余地があるかもしれない。よって、ここでは取り上げない。また、将来的に同性カップルが子作りできる技術が普及するかもしれないが、現状において同性カップルは子作りできないとする。
すると、
の3つに大別される。子供を産まないという意味で2と3は同等であり、しかしながら2は制度の恩恵を受ける。それは良いのか? という問いがよく聞こえる。答えを先に書けば「良い」である。
まず、「制度」に関する一般論から入ろう。そもそも制度は目的に厳密に合致していなければならないわけではない。むしろ複雑怪奇な事情が生じる現実社会を四角四面の制度が厳密にカバーできるはずもない。例えば生活保護という制度は、どんな状況においても最低限生きていけるようにするためにある。一昔前に話題となった事例では、Kは莫大な収入があるにも関わらず、Kの母は生活保護を受けていたということがあった。ここでは、Kは悪意を持って母に生活保護を受けさせていたとしよう。これは制度の目的に合致せず、制度を厳格に運用すると言うのであれば、この穴を塞がなければならない。では、どのように塞ぐか? 親族に金があればダメとすると、DV等で逃げた人たちも生活保護を受けられなくなる。これでは当初の目的が毀損してしまう。
という筋の通らなさは、制度が目的を厳密に達成できないという事から生じている。Kの母が生活保護を受けているのに、金を持っている人が生活保護を受けられないのはおかしいといえるだろうか。どのような線の引き方をしても目的に合致しないことがあるから線なんていらない、というのは横暴である。
ではどのように線を引けばよく目的と合致するだろうか? 現状において
で、2と3の間に線を引き、2が不当な利益を得ている者だ。これをもっと厳格に区別する「結婚の要件」を定義することを考えよう。むろん、「男女」という以上の要件を加えた時点で憲法違反になるだろうが、ひとまず置いておく。
例えば
とするのはどうだろうか。なるほど、これなら子なし夫婦が減るかもしれない。しかし、「生殖能力がある」とはどのように定義するべきか? 治療可能なED等も含めるのか? それでは目的に合致しながら恩恵が受けられなくなる人が出てしまうのではないか。
では、
とすれば、子作りできる可能性が全くない者を排除できる。一方、結婚→子作り→離婚→生殖器喪失→再婚、というプロセスが踏めなくなる。
以上のように、目的を毀損せず、2のケースを減らす適切な制度設計が思いつかない(私が思いつかないだけなのだろうか)。疑わしきは被告人の利益に、ではないが、
おお、反応があるとは思わなかったな。元増田?違う気もするが。 結婚制度を"単体"ではなく、目的達成のための制度体系の"一翼"と捉えてほしい。全ての恩恵を 結婚している/して...