2013-03-13

羽生は負け演技をしたのではないよ

ちなみに僕の棋力は、ボナンザの中級に勝ったり負けたりする程度のヘボですので深いことは全くわかりません。

詳しい人は突っ込みよろしく。

http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51769973.html

http://b.hatena.ne.jp/entry?mode=more&url=http%3A%2F%2Fblog.livedoor.jp%2Fgoldennews%2Farchives%2F51769973.html

このまとめブログブコメを読んで。

スレを立てた人は多分冗談で立てたんだと思う。

放送見てたら羽生の表情が演技だとは思わないはずなので、あれは言わばキャプチャ芸というやつだ。

それがまとめブログに載って拡散していくうちに、本気で「羽生さんが負けそうな演技をして相手を油断させたんだ」と思う人が出てくる。

ブコメを見てもチラホラと。

別にまとめブログtwitter面白おかしく脚色されて広まることはよくあることだし、一概に悪いことだとは言えない。

確かに、「羽生さんが明らかに負けそうな表情をしたけど最後は結局勝ちました」というネタはそれなりに面白い

から、そういう冗談面白がって消費することは別にいい。

いいんだけど。この将棋は、ネタとして消費するにはあまりに惜しいくらい凄かった。

それこそ、「羽生さんが明らかに負けそうな表情をしたけど最後は結局勝ちました」なんていうネタの数十倍面白かった。

から単なる羽生コピペ的なネタひとつとして消費してしまうのはもったいないと思う。

なのでちょっと解説したい。

この将棋はどういうものだったのか

NHKでは日曜日の昼の時間将棋の対局を放送しているんだけどこれは4月まりで、一年間掛けて50名が争うトーナメント戦になっている。

上のまとめブログ羽生が負け演技をした、とされる対局は先の日曜日に行われた準決勝のようすだ。

まり一年近くをかけてトップ棋士50名がベスト4まで絞られた状態である

残っているのはどいつもこいつも化け物級の強豪ばかり。

羽生の対戦相手は郷田真隆棋王羽生と同世代ライバルの一人である

タイトルホルダーでA級棋士第一人者中の第一人者であり、間違いなく将棋界のトップに立つ一人である

その棋風は「格調高い」と形容され、プロ棋士たちも郷田棋譜をお手本にするほどだ。

柔和で端正な顔で、女性のファンも多い。

対局で何が起こったか

対局は、終始先手の郷田ペースで進む。

終盤、持ち時間を使い切った所で、郷田が5三桂成と羽生の王を詰ましにかかる。

勝負に出た手だ。

結果から見ればコレが悪手となった、ようだ。

優勢な郷田が焦らず、慎重に打っていけば勝てたはずだったというのが解説の先崎八段の見解である

しかしこれもあくまで結果論だ。

相手が羽生でなかったら、郷田がそのまま押し切っていた可能性もある。

このタイミングで仕掛けなければ結局郷田が負けていた可能性もある。

勝負をかけて踏み込むか、とどまるかといった駆け引きは対局者達にしかからない深い領域の読み合いの結果だ。

郷田の手が悪手というのも結局羽生が勝ったという結果が出た後だから言えることなのかもしれない。

ともかく、羽生は踏み込んできた郷田の勝負手をギリギリのまさに紙一重のところで躱した。

そして羽生に手番が回ってきた。この瞬間を逃せば勝機はない。

詰ませなければ羽生の負けは確定だ。

持ち時間は使いきり、考える時間は一手につき30秒未満しかない。

まとめブログ羽生苦悶の表情はこのタイミングの時の表情である

終始劣勢な中で唯一にして最後にして最大の勝機が見えた瞬間。

ここを逃せば敗北は確定である

はたして詰むや詰まざるや。

羽生が、5八龍から連続王手をかけ詰ましにかかる。

その時の動画がコレだ。

http://www.youtube.com/watch?v=swkQmaiBsSw

解説の先崎八段のコメント文字起こししてみた。

ちなみに先崎八段は3月のライオンの監修をしていたりもする。これまた将棋界の第一人者である

解説「ほー、銀から……ですか? 銀から……?」

聞き手「でもいまちょっと慌てた感じでしたが」

解説「そうですね……。(絶句)なるほど!最後7二に桂が打てると言ってるんだ。いやーこれは……凄いことが起きましたね。いやこれは気が付かなかった。天才ですねさすが」

聞き手「なるほど……。すごい……」

解説「いや天才です。いやー羽生さんは昔から天才だとは知ってたんですけどね。なるほど天才の詰みですコレは。(中略)いや天才ですね。いやもう」

聞き手「この短時間で。なんか鳥肌立っちゃいますね」

解説「すばらしいですねこの詰みを発見したのは。信じられません。よく発見しましたね」


プロ棋士の度肝をも抜く大逆転勝利である

流石の郷田も、青ざめて、頭を覆ってしまうほう。

冒頭にも書いたが、僕は3手くらい先しか読めないヘボ棋力である

そんな僕ですらゾワゾワと鳥肌が立って、変な笑いがこみ上げてくるほど、この終盤の手は神がかり的だった。

解説の先崎八段も、聞き手の矢内女流四段もプロ棋士だ。

先崎八段は天才集団プロ棋士の中で、そのトップクラスにいる、言わば天才中の天才である

その天才中の天才が全く気が付かなかった一手である

プロ棋士をここまで、動揺させ、驚かせる。羽生の指したのはそんな手だった。

それに至る道筋を考えていた時の、我々常人には及びもつかない深い読みに入っていた表情が例のまとめブログに載っていた苦悶の表情である

そりゃ、あんな顔もするであろう。

というわけで

郷田を倒した羽生は、いよいよNHK杯決勝戦に挑む。

決勝の相手は将棋界の魔太郎こと渡辺明2冠。

間違いなく、今棋界で一番強い二人である

まさに怪物vs怪物。化け物vs化け物。天才天才の戦いだ。

文句なしのゴールデンカード。はたして結末やいかに!

次の日曜放送だ!見逃すな!

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    これを書いたものです。ブコメを見たら誤解されてる方がいらっしゃるみたいなのですが僕は罰山さんではありません。 文体模倣したりするつもりは全くなかったのですが……。 万が一...

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    私が違和感を感じたのはむしろ元スレの>>19の方。 「油断?軽んじ?大歓迎ですね。相手から勝手に敗けに歩を進めてくれるんですから。 有り難く勝ち星を頂戴しますよ。」 ...

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