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はてなキーワード: サイドブレーキとは

2010-03-09

旦那が夜中に奇妙な音を発した件

早朝、未明

普段起きる時間よりも2,3時間早いだろう頃。

何故かすっきり目が覚めてしまい、布団の中でぼーっとしていた。

そのとき事件は起きた。

キュルキュルキュル

キュルキュル

カセットテープを高速巻き戻しして絡まったときのような、サイドブレーキを下ろしたままアクセルを強く踏んだ時のような、奇妙な音だ。


キュルキュルキュル


部屋の中から聞こえている。

隣には、旦那が寝ている。


キュルキュル


そちらを向くと、突然その音はなくなり、普通いびきが始まった。



-------------------

今日の朝体験した出来事です。

Q.いびきなんじゃないの?

以前、病院入院していたとき、真夜中にカツーン、カツーンという足音がしてびびっていたが、よくよく耳をすますと同室の付き添いしていたおっさんのいびきだったことがあるので、そういう奇妙ないびきもあるかもしれない。

Q.歯ぎしりじゃないの?

あんなに高速で大きな音が?どんだけ強い歯ぎしりなの?

Q.宇宙人

ここ最近ウルトラセブンに嵌っているので、一番最初にこれを思い立った。

2009-12-19

違和感

早く起きすぎた(4時起き)。潰しきれないので日ごろの疑問とかを時間つぶしに書きます。

以下本題。

どんな状態でも常に自分の体に違和感を感じる。私鼻が低いからコンプレックスぅ~~とかそんなレベルじゃない。こんなレベルなら気にしてないけど出っ歯を治したい。あとO脚。

他人からすれば気にしすぎ、整体通えばってなるんだろうがそれらが原因で自分を嫌いになった。

最初は小学生の時、アキレス腱あたりに違和感を感じて足を引きずったりしてた。

とはいっても毎歩ではない。不自然なのは分かってたから我慢した。

でもまったくやらずにいたらなんか頭の中でストレスだか何かが爆発しそうになる。多分ベッドの上でバタバタする程度だろうけど。

次は首だった。表現しづらいがもう違和感感じまくりだった。ここ5年くらいはひどく、切り落としたい、折りたいと感じる。

でも痛いのは嫌だし死にたいわけじゃない。ただ首がいらない。でもマフラーは好きだよ。ラブ。だがタートルネック、お前はダメだ。

次は肩(これのみはスポーツでの負傷が原因でかばってて発症した)これも今はもういらない。

ただ座ってるだけ、寝てるだけでも苦痛、要は生きてる限り常に違和感を感じる。

それ以外に目周辺も、背中(背骨?)も何かが違うと感じる。整形じゃない、とりかえたい。

これら全てを分かりやすく例えると魂が入るべき体を間違ったかのような感覚(多分)。

ちなみに整体体験したしストレッチもやったが意味なし。気持ちよかったけどね。

まぁ、なんだ。その結果生きるのが苦痛になった。だって例え金無限にあろうとこの違和感からくる苦痛ストレスに耐えられないんだよ。お金あったらそりゃ楽しんでやるけど。。。

鬱じゃないけど考え方は鬱と診断されるやつと同じになった。(楽しいと感じないとか、素直に感動しないとかetc

死にたくはない。でもこの先この違和感が増えてくと思うと怖い。どうしよイライラして首折ったり目を取りだして洗おうとしちゃったら。。。

高速道路を運転中にサイドブレーキに手を置いてもし、くしゃみの勢いで引いたらどうしようって言う無意味で起こり得ない心配レベルだけど怖い。

アダムファミリーの首なし兄貴みたいな動きになるのもやだしな。。。


所でIQが高い事が後々分かったのだが確か250~500人に一人程度らしい。ここまでくると一問感で当てただけで100人単位変わりそうだよ。

IQ高いと頭おかしいっていうし体の違和感電々はこれが原因かもと思ったがこんなん日本だけで何人いると思ってるんだ。レア度で言えば生徒会長以上。。。悪くないかも。

MENSA学校の1クラスにつき一人入れるレベル学級委員ね)も入ったが海外行くことになったので最初の参加だけ。

賢いと思える人はたくさんいた(IQ関係なくそりゃたくさんいますよ)けど私みたい人はいなかった。そりゃそうだ。

ちなみにルービックキューブは全然とけなかった。IQにも向き不向きがあるということか。

私はIQ高いと言われておいて出来ないのが悔しかったので結局色々考えてパターン化することで3分きれるようになった。

でもパターンで覚えてるから久しぶりにやると見ながらやるよりパターンにハマったら目を瞑ってパターンをただ思い出してやる方が楽。

だから目を開けて実は間違ってたり落としたりしたら絶望的。(これは最速狙うわけでも、ベストな解き方だと思ってるわけじゃなく、ただ私に合ってる解き方)

IQが高くても別にいいことはない。今思えば、少なくとも私はIQ無駄遣いしてたようなきがする。

英語は周りと比べるとろくにしゃべれないし文法は本当にまったく知らないのでTOEICは実力は750くらいが妥当だろうに

なんとなく出題者の意図とか聞き取れないところを補完して感覚で800後半はコンスタントにとれる。

文法問題は雰囲気でしっくりくるのに決めてる。これで8割以上。SVOとか修飾とかよくわかんない。主語はすぐわかるよ、最初に書かれてる。一文字で始まってたら確実。

ボキャブラリー日本の出来る高校生並程度なので単語覚えるだけで900点は行くと思うが、これじゃ見かけ倒しだ。自信もって履歴書に書けない。

他のテストでもこれで助かってきた面は多いと思う。

他にもIQが高いから故か楽してきた。

それに左利きから右に直され、ペンを持つのが苦痛(↑の違和感もあり)だから読む事メインで対応できるようになり、相対的に字は汚くなった。

余計ペンを持たなくなった。これじゃ自信もって履歴書"が"書けない。


格闘技してた時も別の事情で半年で辞めざるをえなかったけど1Rなら相手が経験が段違いでも一緒に練習してた人なら性格と練習量からどう考えてるか分かるから完全にリードもできる。(少し嘘)

2R以降は体力の問題できびしくなるしパワーで負けてたけどね。

とあるスポーツでも超経験者よりもいい案を出すことも結構あった。これが助け船になったこともあるので力になれて嬉しかった。

他には日常生活で便利というか回転が早い故の効率がいい行動とか行為を発見するのが早いくらいしかない。

そろそろ準備する時間だ。無意味な上に中途半端だが気にしない。でも体に違和感電々は本当に悩みであり苦痛です。

読んでくれた人いたならありがとう。

なつかしのコスコでホットドック食ってくる。

2009-07-13

トラックドライバー体験記。

長文で失礼。

去年、4ヶ月間、トラックドライバー仕事に就いた。

大型免許持ってるけど4トン配送だった。

地方零細企業待遇は最悪だった。

酷い職場だった。

職安求人票にはデタラメばかり。

勤務時間休日もまったくの嘘。

福利厚生もあるように言われたのに無し。

給料は言われた額より1万少なかった。賞与なんて存在しない。

面接で言われた仕事が急遽なくなって、違う仕事をやらされる。

入って1ヶ月は仕事内容が安定せず、青果を中心にさまざまな仕事をさせられた。

青果市場には私の会社から複数トラックが行っていたが、

仕事も教えてもらえず、同僚や市場人間に怒鳴られてばかりだった。

怒鳴られて手伝わされて、私の仕事は誰も手伝ってはくれなかった。

それで遅れるとこっぴどく叱られた。

フォークリフト免許持ってないのに運転させられた。

入社前にリフト運転できませんと言っていたのに。

フォークは乗れて当たり前。

常に急かされ、荷物を落とすと怒られた。

市場の地面はでこぼこで、ちょっと急ぐとすぐに荷崩れした。

青果スーパーなどに店舗配送するんだけど、

いつも遅いと怒鳴られた。自分ではめい一杯急いでいるのにもかかわらず。

心が折れそうな日々が続いて、たまらず退職を願い出た。

受理されず。

社長がお前の為に仕事とってきた。辞めさせるわけにはいかないと言われる。

たまらず、労働基準局に相談。

運送業は言うこと聞かないからね。辞めるんだったらいいじゃん」

って言われて相手にされなかった。

新しい仕事熊本物流センターから宮崎長崎まで店舗配送。

センターは綺麗だったし、いい人が多かったので職場環境改善された。

しかし今度は想像以上の長時間勤務が待っていた。

自分福岡在住。昼に出て、夕方、朝に帰って来る。

会社の方針で高速は使えない。使うと自腹。

往復は時間的にぎりぎり。

長崎配送は家で眠れたけれど、

宮崎配送の日は家には帰れず物流センターに帰って車内で寝る。

だいたい1日19時間労働。3時間しか余裕がない。

睡眠時間は1日2時間もない。そんな状態で長距離配送。

休日もほぼなし。半休が4回あるだけ。

休日も10時間くらい働いてた。しかし給料は半休あつかい。

何度も運転中に意識が飛びそうになった。

3ヶ月目の終わりにやっと辞表が受理された。

しかし、退職日は半月以上ずるずる延期させられた。

退職1週間前、とうとう居眠りで事故った。

配送が終わっての明け方。信号の少ない国道軽トラに突っ込んだ。

目は開いていたが意識は飛んでいた。

とっさにブレーキを踏んだが間に合わなかった。

今でもハンドルを握ると、あの衝突した時の衝撃がよみがえる。

警察に過労を強要させられてたと訴えたけど、

過労運転で事故おこしたら免許取り消しと脅され

脇見運転ということになった。

脇見にしてくれた事を感謝しなければならなかったが、

納得はいかなかった。

最終日、トラックのサスペーションが折れた。

どんな運転してるのかと社長恫喝される。

とくに自分は酷い運転はしていなかった。

後々考えたら、重量オーバーで荷物を運んでいた事がわかった。

最大積載量の2倍近く。サス折れても仕方がない。

過積載も、荷主に積めと言われたら、断れない。黙認だ。

そもそもトラックはオンボロで、毎週の如く壊れた。

壊れるたびに社外の整備工場へ持って行った。貴重な休みがいつも修理で潰れた。

夏の暑い時期にもかかわらず冷房が壊れた。

灼熱地獄の車内で、疲労と暑さに耐えながら仕事をしなくてはならなかった。

一度休みを潰して修理したけど、すぐにまた壊れた。

1ヶ月ほどその状態が続いた。

サイドブレーキもいかれてた。

荷台で積み卸ししている時に車が動いたことがあった。

慌てて自分が怪我するのも顧みず、運転席に飛び乗って足ブレーキをかけた。

間一髪間に合った。もう少し遅ければ、道路トラックが落ちてしまうところだった。

夜中の配送にもかかわらず、貨物室の電気がつかなくなった。

携帯の灯りで作業をした。

休みの日に配線をしらべてみると、配線の仕方がめちゃくちゃだった。

前の仕事機械メンテやっていた私は、自分で配線し直して修理した。

これだけ働いて給料は20万弱。

人の2倍以上、休み無しで寝ないで働き続けて20万弱。

時間給になおしたらめちゃくちゃ低い。

最低賃金バイトしたほうがマシ。

しかも福利厚生無し。

会社で引き落とされるのは所得税のみ。

年金健康保険などは自腹。

通勤は手当が出ないのでトラック通勤

家の近くには止められないので、知り合いの空き地を借りた。

最終月は文字通り寝る暇もなく働いたのに

給料10万ちょい。免許にもキズが入って、たったそれだけ。

死にたくなった。

とにかく自分の予想しない事ばかり起きた4ヶ月だった。

想像以上の職場環境でした。

細かい事を書けば書ききれないほど、酷いことだらけだった。

退職時に社長挨拶に行くも、携帯をいじりながら受け答えされた。

社長は終始こんなかんじの人でした。

しかし、事故った負い目と、辞めた負い目を感じて文句言えなかった。

今考えると、私がどうして負い目を感じる必要があるのかわからない。

退職した日、親と事故の事で喧嘩した。

理解してもらえないのは哀しかった。

惨めで哀しくて失う事ばかりでつらい事ばかりの4ヶ月間だった。

辞めてからしばらく車を運転する気になれなかった。

あれだけ車好きだったのに、さっぱりドライブに行かなくなった。

挙げ句の果てに車も手放した。車が嫌いになった。

今でも私みたいな状態のドライバーが運転するトラックが、走ってると思うと怖くて公道を走れない。

行政警察もそういう状態を黙認している事を知った。

過労事故社会問題にならないのは警察監督署がそう処理し居るからだ。

いまでも過労運転のトラックドライバー日本の道を走り回っている。

恐ろしい。

それから今までいい歳なのにニートやってる。

この経験で働くのが本当に馬鹿らしいって思えた。やる気を失った。

でもそろそろ働かなくてはやっていけない。

もう二度とあんな職場に当たらない事を祈る。

そしてプロドライバー転職しようとしている人にも警告したい。

会社選びはくれぐれも慎重に。

もし、今仕事を持っていてドライバー転職するんだったり、

他の職種が選べる状況であれば、悪いことは言わない、ドライバーはやめておけ。

2009-01-05

5/15 ハッピーウェディング

「憎いよつんく!この後一曲目がモーニング娘。の新曲“ハッピーサマーウェディング”なんですけど、もう目の付け所が銭だね!番組プロデュースコーナーやるんで参考にASAYANを見てたんですけど、この曲って今まで結婚式新婦のお友達のOL達が歌っていた“てんとうむしのサンバ利権を根こそぎ奪って『黄金色モチじゃ!モチじゃ!』って…俺は何で音楽業界を泥臭い話でしか語れないのかが良く分からないんですけど。」

「いや違う違う、全国の幸せな瞬間に自分の歌が流れる喜びか?しかし…如何にも『サッ子は職場アイドルで、私達に振りまいてた明るさを…明るさがタカ君だけの物になるなんて少し羨ましいですけれども』ってなんかもういい話じゃないですか。そりゃあね、車庫から俺の特別仕様の8tバキュームコンボイが出てくる映像が克明に頭に浮かんできますよ!」

OL時代の友達が3、4人配置に分かれて、ホテルマンがそれぞれのマイクの高さを調節し、カラオケの最初の何章節かが流れ始めますわな。その瞬間、俺の車庫でスポットライトが点灯し重厚なエンジン音が響き渡り!自動車庫のシャッターが途中まで開きかけた所でバキュームコンボイシャッターを突き破って出てきますよ!物凄いスピードでフォーミュラ用のタイヤが唸りを上げながら火花を飛ばし、角のゴミ収集場のポリバケツをふっ飛ばしながらめざすは結婚式場!」

「やっと歌い出す段階で既にホテル入り口ですよ!『そのスピード駐車場は無理です!』と言いながら警備員のおじさん達が蜘蛛の子を散らすように果てたところで、サイドブレーキをガツーンと後輪ロック!扇を描くように車体が回転しながら1階大宴会場に横付け!『ハッピーウェディングハッピーウェディングでございます!』と逆墳ボタンをボチィ!あまりの急制動に頭がフロントガラスを突き破り、額を血で染めながらも『結婚おめでとう!』」

見えるラジオ。本当に。これが見えるラジオ。」

http://www.saturn.dti.ne.jp/~kamei/up's/op00b.htm

2008-08-24

http://anond.hatelabo.jp/20080824230003

パソコンが扱えない友人は、特定のソフトの特定の動作をさせるための手順を丁寧にメモしていた。

そういう人を結構よく見かける。特に中高年。

でもこれって、車に喩えると

ドアを開ける

座席に座る

ドアを閉める

シートベルトを締める

ブレーキを踏む

キーを差し込む

右側いっぱいまで回す

とかいちいち書いて、スーパーマーケットまで運転する方法をメモするようなもの。

しかも、肝腎なことをメモし忘れてたり、少し状況が変わったりして、メモの手順通りに進まなくなると途端にパニックに陥る。

(車の喩えでいくなら、「サイドブレーキを解除する」という手順を書き忘れてて「この車、全然スピード出ない」と文句を言ったり、途中の道が工事中だとそこでパニックに陥って先に進めない、みたいなもの)

2008-03-01

YES,YOU ARE YOUNG.

 飛ぶ鳥を見ていた。大口を空けて、体を仰け反り阿呆のように空を舞う鳥を見ていた。鳥が自由の象徴だなんてステレオタイプに過ぎて笑い種かも分からないけれど、それじゃ、自由って何さ。何処へでも行けることだし、踏む二の足がないということだし、生まれ変わりを信じないということだ。必要がないということだ。

 仕事は至極簡単で、かつつまらないものだった。アルバイトのほとんどがつまらないのだろうけど、僕の仕事はその中でも群を抜いてつまらないものだと自負している。自信がある、雇用主には悪いが。

 客がひとりも来ないので、頬杖を突いて馬鹿みたいなエプロンを首からぶら提げて、馬鹿みたいなカウンター椅子を出して座っていた。店長が来ないのをいいことに、半分寝てもいた。実際見つかったらとんでもないことだ、僕はまだ辞めるわけにはいかないのだから。それがどんなに馬鹿みたいな仕事だとしても僕に金銭を齎すことには変わりがない。それに少々の借金もある。前のアルバイト先でのような失敗を繰り返すわけにもいかない。前の失敗というのは要は遅刻したのを咎められて店長を殴ったんだけれど。どん馬鹿みたいなエプロンだって、僕の馬鹿さ加減には適いやしない。

 僕の就業時間が終わる。深夜、空気が冷たくてシャッターを閉めるときに流れ込んだ外気が異様に硬かったのが印象的だった。吉田さんが僕に声を掛ける。

 「裏のダンボールも入れないと」

 とても澄んだ高い声が眠った脳に響く。

 「ああ、オレやるよ」

 「ありがとう」

 礼を言うようなことでもないのに、彼女は礼を言う。だって僕はここの従業員なのだから。僕は店の裏手に回り、高く積み上げられたダンボールのひとつを両手で抱えた。屈めた腰を上げると重量が膝まで音をたてるかの錯覚で、響く。腰にくる。以前、ヘルニア入院したことがあったので少し危惧した。視界の隅に、影。

 「んしょっ」

 少し喘ぐような、うめくような可愛らしい声を出して彼女ダンボールを持ち上げた。吉田さんだった。

 「いいよ、オレがやるから」

 僕は主張したのだけれど、彼女は持つのをやめない。

 「だって、前にヘルニアやったじゃない。ふたりで片付けた方が早いし」

 彼女はそう言う。それで、僕はそれ以上は何も言わなかった。ただ、感慨に耽っていた。

 「あたしの方が多分力あるよ」

 そう付け加えた彼女は月明かりに照らされて、美しかった。

 「まだ、腰かばう感じある?」

 吉田さんはそう尋ねた。

 「うん、まぁ、少しね。でも大丈夫だけど」

 隣を歩く彼女が覗きこむように僕の目を見る。実際、膝の皿の下あたりに水が溜まるという事態になり、注射でそれを取り除いたりもしていた。腰を庇う故の膝への負担である。自己紹介的に話した僕の入院歴を彼女はきちんと記憶し、また気遣ってもくれた。長女故の優しさか、あるいは他のもっと何か別の、よそう。

 彼女と初めて顔を合わせてから暫くが経つ。随分もう同じこのシフトで働いていた。僕としてはありがたかった、何しろ僕は人見知りが激しく、またぶっきらぼうな物腰のおかげでとても接し難い人物であるのだ。

 「今日は家寄る?」

 彼女は尋ねる。

 「コーヒー飲ませて」

 僕は言う。僕は初めて彼女の部屋でコーヒーをご馳走になってから、いつもこの言葉を期待している。いつもだ。

 吉田さんの部屋は可愛らしい。余計な物がなくて簡素だけれど、可愛らしい。

 「まだ両親とうまくいってないの?」

 彼女は言う。

 「…うん、まぁね」

 言葉に詰る。僕が彼女の部屋に寄るのも深夜のアルバイトをしてそれ以外の時間は寝てだけいるのも、単に僕と両親の不仲によるものなのだ。彼女はひとり暮しだが、両親とも妹とも仲が良い。それはそうだろう、彼女を疎ましく思う人間などこの世にいる筈もない。忌々しい僕に限った話だ、そんな幼稚な事は。

 淹れたてのコーヒーが産声ならぬ湯気を上げる。どちらも湯のイメージ、下らない連想、下らないレトリック。僕の下らない悪癖、嫌気がさす。

 「暖房利いてきたね」

 紺色のニットカーディガンを脱ぎ、七部丈のカットソー姿になった彼女は暖房を切らずに言った。決して「暑い」と言ったり、「消す」と尋ねたりしない。だから僕は彼女が気に入っている。クソ忌々しい母親みたいなことも言わないし、親父のように小言も言わない。「親友」と呼びかけたりもしないし、「ちゃんとしなよ」と余計な心配もしない。彼女は全ておいて良い塩梅で、僕と付き合ってくれる。

 「ミルクある?」

 「あるよ」

 吉田さんは立ち上がり、台所からミルクを5つ持って来た。暗にもう二杯ばかし飲んでも良いということなのかも知れない。そういう暗喩なのかも知れない。

 僕は以前は部屋に貼ってなかった壁の数枚の写真を見咎めて言う。

 「あれ、これ何?」

 「ああ、それね。合宿館山行ったんだ」

 「合宿吹奏楽合宿?」

 「そうよ、どん部活だって合宿ぐらいあるわよ」

 「へぇ

 意外だった。彼女合宿なんて行かないと思っていたからだ。例え存在したとしても彼女は断るものだと思っていたのだ。はなから考えに入ってはいなかった、当たり前だと思っていた。

 「戻る気ないの?」

 「いや、まだなぁ」

 休学したばかりですぐさま復学するのはないにしても、いずれ、だとしても、まだそういう気にはなれないのだ。僕は「まだ」と言ったが、本当は戻るつもりはなかった。例えば彼女に会うためだけには学校に戻れない、こうして会えているからだけではなくとも。

 時計は4時を回った。

 「面倒なら泊まれば」

 僕は面食らった。予想外の言葉であったからだ。僕の家はここから歩いてだって15分くらいだし、帰れないということはありはしないのだから。電車だって使わない距離なのだから。彼女は恐らく僕の心情と事情を理解して、そういう彼女一流の許しと癒しを持って僕に接してくれたのだろう。

 「あ、もうそろそろ寝るの?」

 彼女は僕と違い、朝が早い。僕は1日ぶらぶらしているだけだから良いが、吉田さんはそうもいかない。

 「寝るけど、まだ平気だよ」

 「じゃぁ、寝るまではいる」

 僕はそう言った。

 「ちょっとトイレ入ってて」

 吉田さんはそう言った。僕は言葉に従い、取りあえずユニットバスの扉を開け中に入る。ガサゴソという何かをしている音が聞こえるし、胸が高鳴る。僕も馬鹿じゃないから。

 「いいよ」

 扉を再び開け外へ出る。彼女はゆったりとしたパンツに履き替えて、長袖の薄いTシャツに着替えていた。薄いTシャツの下は下着をつけていない。欠伸を隠す仕草で口を覆ったとき、薄いシャツに乳首の形が浮き出る。僕は心臓が破裂する。

 「何か貸そうか?」

 「いや、いいよ」

 「じゃ、寝るか」

 彼女はそう告げて、部屋の電気を落とした。

 凄い早さで胸が打つ。彼女が目を閉じ、それで僕は彼女が何かを待っているのだと確信して彼女を抱きしめた。更にドンドンと胸が打つ。僕は吉田さんの唇を塞ぎ、薄いシャツを捲り上げた。薄明かりの中、伏せたお椀型の暖かい空気な中では蕩けそうな胸の先に口をつける。ボタンのないゴムパンツに手を差し入れて、弄る。僕は荒い息遣いで全身を弄った。彼女は声を上げなかったが、気付かなかった。

 「あのさ…」

 吉田さんの声は「ああん」ではなく「あのさ」だった。聞き間違いではなく、「ああん」ではなかった。僕は突然我に返る。隆起したものも急速に恥ずかしさで萎える。似ているけれど「ああん」と「あのさ」ではすごく違う。

 「ごめん、嫌だった?」

 僕はわけが分からずに尋ねる。焦る。

 「いや、嫌じゃないけど、するの?」

 彼女はそう言った。僕は何て答えて良いものか分からない。「する」の反対は「しない」で、「するの」と尋ねるということは「しない」という選択肢もあるということで、果たしてそれは僕が選択することなのかどうか、もしくは「するの?」は「マジで?」ということかも知れない。彼女は僕を罵りはしないだろうが、そういう気持ちは存在するかも知れない。僕の唾液が付着した部分が光っていた。

 僕の借金の話をしようか。

 僕が少々の借金をこさえた事は話したけれど、一体どんな理由かは話していない。理由はいらないかも分らないが、簡単に言うと罰金刑だ。

 僕が学校を休学してはいないが事実的には進級が不可能になった頃、毎日繁華街で何をするでもなく、ぶらぶらしていた。その頃属していた劇団での立場が急激にまずい事になっていた時期で、役も貰えなかった。演出の奴を殴ったせいでもある。わざわざオーディション合格してまで属した劇団だし、それなりに楽しかったのだけれど、どうもうまくいかなくなっていた。その折、街で喧嘩になった。

 全く僕が悪い。何故なら僕が売った。3人組の若者がいたので、そいつらに聞こえるように酷い言葉を呟いた。彼らは一目見て良い恰好しいだと分ったけれど、人並み以上にプライドが高かったらしく応じてきた。3対1の殴り合いになり、勝てそうもなかったのと異常にムシャクシャしていたのとで、刃物を出した。刺してはいないし、少々斬りつけた程度だったけれど、そこで御用になる。実刑にならず、親に肩代わりして貰い今に至るということだ。それでも釈放されるまでは地獄のようだったが。

 そして僕は借金だけが残った。劇団は辞めた、留年した。

 「するの?」

 彼女が悲しそうな顔でそう尋ねた後、僕はまた急速に隆起していた。

 再び下着の上から当てた指を動かすと、彼女はとても大きい声を上げた。僕は勢いづいて下着の中へ指を入れて動かす。隣の部屋まで響くような声を、彼女は出す。それから僕は吉田さんの着ているものを脱がした。

 「あれ?」

 僕は自分のものを彼女入り口押し当てた瞬間、不思議感覚に襲われる。

 「あれ?」

 もう1度呟く。

 「あれ、あれ?おっかしいな、クソ、何でだよ」

 最早泣きそうだった。

 「気にしないほうが良いよ」

 そして彼女はこう言った。

 すごい、何もかもが嫌だった。生まれたことすら呪った。僕は学校も両親も兄弟も学友も教授店長災害も事件も平和も金も芸術も僕も、何もかもが嫌だった。一番は僕だった。クソ忌々しいアルバイトでこつこつ日銭を稼いで、こつこつ自身の一部分を削って量り売りするのだ。テレビをつければ、クソ忌々しいワイドショータレントセックスを追いかけて、クソ忌々しい番組馬鹿みたいな笑いを押し付ける。僕は可笑しいときには笑えないし、笑いたいときには笑えない。そういう風につくられているのだ、この国は。いやこの世界は。クソ忌々しい。

 爆発しそうだった。最早爆発しか許されていなかった。殺しは許されていなかった、だから爆発しかなかった。僕は何かを巻き込むことが許されていなかった。誰かを巻き込むことを望まなかった、だから、ひとりで、誰とも関係なく、たったひとりで、誰も知らないところで、生まれ変わることを決心した。

  弟に車を借りた。僕は免許を持つが車は持っていなかった。

 「明日、車貸してよ」

 僕は深夜にそう告げた。彼は良い返事で快諾してくれた。二階の自分の部屋で、服を数枚と現金をリュック仕舞い、地図を用意した。明け方、まだ誰も起き出さない時間帯に自動車のキーを握り締めて荷物を背負い、エンジンをかけて出発する。さらば、僕の生まれた町よ。

 国道を快調に飛ばす。明け方は車の数も少なく、頗る順調に進路を北へ向け走った。途中、お腹が空いてコンビニエンス・ストアでおにぎりを買い駐車した車の中で食べた。もう大分町からは離れた。僕は嬉しく思う。遣り直せる、僕のクソ忌々しかった人生はし切り直せる。ただ少しだけ違った、掛け違えたボタンを掛け直せるのだ。誰も知る人がいない町で、何も知らない町で、僕がどういう人間かを知る人間のいない町で。煩わしい些事や柵、絡め取られた手足の自由を、フルに、全開に、僕という人間の素を元を、僕を形作る構成する根の部分で、僕は生きることが出来る。下らないアルバイトともさよならだ。

 また休憩のためにコンビニエンス・ストアに立ち寄った。

 街灯が点る。

 僕は携帯電話を取りだし、吉田さんに電話を掛ける。出ない。もう1度掛ける。

 「はい、もしもし」

 彼女が出た。

 「あのさ、今何処にいると思う?」

 「何?何処?分らない」

 「なんと、××県にいます。さよなら言おうと思って」

 「え?何?何言ってんの?」

 彼女は本当に事情が飲み込めないようだ。当然と言える、何故なら僕は去るのだから。そういうものだ、別れとは。

 「オレねぇ、遣り直すよ。誰も知らないところに行って、何もかも全部遣り直すんだ。弟から車を借りてさ、ここまで来たんだよ。アルバイトは後で電話して辞めるって言うんだ。お金は心配ないんだよ、実はさ、オレ結構貯金あるんだよね。50万くらいはあるんじゃないかな。朝、銀行が開いたら一番に金おろして、それで、部屋借りるんだ。多分、足りるし、当座暮すには困らないと思う。親に払う借金を返済滞らせてさ、密かに貯めていたんだよ。それで、部屋決まったら仕事探すんだ。オレひとりが暮す分ぐらいは稼げるよ、オレ若いし。そしたら、遊びにおいでよ」

 僕は言いたいことを早口で、興奮しつつ一気に喋った。

 「車貰っちゃうの?」

 彼女は訊く。

 「いや、返すよ。だって維持出来ないし、可哀相じゃない。落ちついたら弟だけには連絡して、取りに来て貰うんだ。そしたらオレが生きてることも親には知らせて貰って、捜索とかも止めて貰う」

 「心配してるよ」

 「あいつらの心配なんか関係ないよ。オレの気持ちは分からないんだもの。育てたのはあくまで「息子」であってオレじゃないんだから」

 「そんなに働けないよ、大変だよ」

 「大丈夫だよ」

 「腰は?痛くならない?」

 「それも大丈夫だよ」

 少しの沈黙があった。

 「何で何処かに行かなきゃならないの?」

 「同じ場所にいたら何も変われないからだよ」

 「違う場所に行ったら変われるの?」

 「多分」

 「あたしを嫌になっちゃった?」

 「そういうことじゃないよ。だから、生まれ変わるためには全部捨てなきゃならないんだって」

 僕は少々イラついていた。水を差された気になっていたのだ。 

 「この前のこと、気にしてるの?」

 「違うって!」

 つい怒鳴ってしまう。

 「オレの人生だ、オレの人生だ、オレの人生だ。好きなことをして暮すんだ、何も煩わしいことに関わらず、オレは本来のオレのままで、オレの人生なんだ!」

 僕は興奮していた。

 「今まで、本当じゃなかった?」

 また少し沈黙彼女は続ける。

 「あたしと会っていたのは違かった?それも本当じゃなかった?辛かった?」

 僕は答えられなくて沈黙した。そして重い口を開いた。

 「だって、付き合えないもん。彼氏いるもん、何も思い通りにならないもん、バイトして、家に帰って、寝るだけだもん」

 独りでに涙が流れた。意思とは関係なく、自動的に流れた。

 「あたしと付き合えれば帰るの?だったら、いいよ。付き合おう。だから帰ろう?」

 「彼氏は?」

 「別れる」

 「違うよ、違うもん。それじゃ、意味ないもん」

 涙が何故か止まらなかった。さえずる小鳥のように止まない。

 「ねぇ、好きなことって何?」

 彼女は尋ねる。

 「分らない」

 「見つからなかった?」

 「うん」

 「見つけようか」

 「うん」

 だけど涙は止まらなかった、ただ眩いコンビニエンス・ストアの明かりが滲むのを見ていた。彼女は静かに言う。

 「帰ってきて」

 「うん」

 僕は車の中に常備したティッシュペーパーの箱から数枚を抜き取り、思いきり鼻をかんだ。キーを回し、サイドブレーキを下ろす。ぼんやりと浮かんだ月から漏れた光りが白い車体を照らして、僕は誰も知らない土地で生まれ変わり損なった。

 吉田さんの部屋の前で車を止める。彼女は僕が車を着けるずっと前から部屋の扉の前で、二階の柵ごしに階下を見下ろしていた。車のドアを開けて体を半分出して見上げると彼女は真っ青な顔色で今にも倒れそうなぐらい儚げにその華奢でか細い体をやっとの思いで支えているように見えた。彼女の吐く息は白く、そしてまた僕の吐く息も白い。

 「おかえり」

 頬を紅く染めて、安堵した顔つきで吉田さんは言う。

 「ただいま」

 僕は言う。

 コインパーキングに車を停めて、彼女に連れられ部屋の中へ入る。力なく吹いた風の力ですら吹き消えそうな程彼女の体は軽い。よろける彼女を後ろから支えた僕は思う。そして驚く程冷たかった。暖かな暖房の利いた部屋で、紅潮した顔のまま彼女は熱いコーヒーを淹れてくれた。ぽつぽつと話し出す。

 「いいところだった?」

 「景色さえ変わらなかった」

 「そう」

 異変に気が付き、瞳の潤んでいた吉田さんの額に僕は手のひらを当てた。良い匂いがふわりと漂う。

 「熱あるじゃん

 「平気よ」

 彼女は笑って言った。

 「ただちょっと暑いだけ」

 「布団敷くから、横になりなよ」僕は慌てて布団を敷く準備をする。

 「ありがとう」

 彼女はにこりと朝露の弾ける様のような笑みを零した。苦しさは微塵も見せずに。

 薄明かりの中、彼女は僕の手を握る。

 「もし迷惑じゃなかったら、手を握らせていて」

 咳き込みながら言う。僕は首を左右に旋回させて、掛け布団を捲り体を滑り込ませる。彼女は「うつる」ことを危惧したが、僕はそんな些事を物ともしなかった。取り合わなかった。

 「不安だったの」

 弱弱しい声で彼女は言った。彼女の常は気丈で、ついぞ聞いたことのないような微弱な周波であった。彼女は僕のズボンの股間に手を這わせた。地形のアップダウンをなぞりひた走るラリーカーのように、布に浮き出た隆起を指で擦った。僕は何も言わなかった。ゆるりと伝わる快感に身を任せていた。布団の中の暗闇で、見えぬところで、僕のズボンボタンが外されジッパーが下ろされた。下着の上から力任せに擦る。

 彼女の手の平は汗がじっとりと滲み、湿気の多い指で、心得た動きで、僕を誘導した。短く空気を切るような吐息が僕の口から漏れる。奮い、僕は彼女の手の甲に自らの片方の手を添えて、静止した。

 「大丈夫だから、しようよ」

 彼女はまた咳き込み、言う。

 僕はゆっくり首を振った。

 「違うよ、あたしがしたいの」

 手の平を彼女の両目を覆うように翳して、僕は言った。

 「今は体が大事だよ」

 「大丈夫だよ、ねぇ、触って」

 彼女は明らかに何かを焦った。そして僕は告げる。

 「吉田さんが大好きです。何よりも好きです。眩しくて、頭の芯が痺れて、でも自分を省みたときに、だから嫌になる。だから変わろうと思った。でも実際は逃げただけだった」

 しばしの静寂が息を呑む。

 「オレ童貞なんだよ」

 彼女は目を丸くしていた。僕は笑わなかった。

 「分った、大人しく寝る」

 切迫感のない表情で静かに言った。閉じた目で何か考えた後、瞼を勢い良く開けて彼女は言う。

 「口か手でしてあげようか?」

 「え」驚き、躊躇する。

 「ご褒美」

 そう言って彼女は布団の暗闇の海、奥深くに身を沈めた。

 僕は演じていた。長い間、ずっと演じ続けていた。

 初めて物言えぬ恐怖を覚えてからというもの、中断なく設定した役でい続けた。その僕は、臆することなく人並み以上の胆力を持つ。髪の毛の色を奇抜にすることでピアスを沢山開けることで人々の好奇な視線に晒されることで、周囲の恐い視線に怯える僕を畏怖の対象へと格上げさせた。ケンカを振っかけることで、襲う側へ回ろうと思った。全ては遠ざけることで僕という個を見つけ易くする目的であった。本当の自分は分らなかった。奇しくもそんな僕が劇団に属し、役者という付加価値を欲した。僕は役者ではなかった。演じていたが、役者ではなかった。ラインが曖昧になり、殊更僕が分らなくなった。

 幕が降りた後も僕はステージに上がり続けていた。観客は帰り、拍手のないところで、僕は演じ続けた。

 ファッション、薀蓄、趣味嗜好、どれも僕は救ってはくれなかった。もがき、救いの船を待った。

 そして天啓、変わらなければ。

 この宇宙の下、僕はもがき続けた。

 下らない世界、下らない日常、思いは変わらない。無限の可能性を持たされて生まれた筈なのに、僕に出来ることはあまりに少ない。

 希望があった。

 それは小さくだが、微かに光を発した。

 この宇宙の下、僕は生きていた。

 下らない世界、下らない日常。固定された首も癒え、あたりを見回すと僕は生きていた。死んだ方がましだと思っていたことはそうでもなかった。死ぬ程ではなかった。何故なら僕は生きていたのだから、それを手放す程ではなかった。気持ちが良かった、気持ちが良かった。

 僕は自由に向けて旅立つ。野放図な精神が蔓延る地へではなく、自らの由に向かい、僕の僕の、僕へ。自由はアメリカにはなかった、自由はほかの素晴らしいくににもなかった。他の何処でもない僕の心の平原にあったのだ。生きるのならば、ここで生きる。理由が必要なら彼女のいるここで。

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