平成元年11月22日の判決では、 上告人が、同条後段の二〇年の期間は、同条の規定の文言、立法者の説明、三年の短期時効に対する補充的機能、
時効の中断、停止、援用を認めないと被害者に極めて酷な場合が生ずること等に照らし消滅時効を定めたものと考えるべきであり、仮に、これを除斥期間と解するとしても、
被害者保護の観点から中断、停止を認めるいわゆる弱い除斥期間(混合除斥期間)であると解すべきであると主張しており、今回の、宇賀克也裁判官の意見のように
20年を前段と同じ消滅時効と解するとすると、20年は、3年に対する補充的機能があるなどの難しい議論となって、本件の規定が常識のみをもっては理解できないような
立法技術論が背後に隠れていることは明らかである。また、3年と20年を消滅時効ではなく、消滅時効と除斥期間であると考えると、20年に関しては、混合除斥期間
という専門的に難しい性格のものと定めなければならないところ、平成元年11月22日最高裁判決は、この種の専門的な議論を排斥し、3年の短期消滅時効と、20年の
除斥期間を定めたもので、その趣旨も、画一的に判断しなければならないという判断枠組みを確立していると言える。しかし、現在のような社会で、平成元年における当事者、ことに
上告人の主張の内容を理解できる一般人がどれだけいるかというと疑問なしとせず、民法724条前段後段を読んだ者が背景にそのような説明、すなわち立法技術が隠れている
ことを知っている者がどれだけいるのかも疑問である。