まぁまぁ忙しくて疲れて仮眠を取り、起きてリビングのソファに横たわると、待ってましたと言わんばかりに寄ってくる愛猫。
くまなく全身を撫でてやる。重点的に顔の周りを撫でると小さくゴロゴロと鳴くので分かりやすい。
充電が切れかけのiPhoneを開くと、マッチングアプリから通知が来ている。中々に美人だ。でも疲れてるからもういいや。
ソファに横たわると愛猫は私の腹を枕にしてスヤスヤし始めた。ローテーブルの上のアイコスに手を伸ばしつつ、写真を撮る。
英会話SNSにI am a cat pillowと写真と共に投稿。いいねが沢山つく。
上機嫌になったので、昼間同僚女性と話した「結婚しなくても良いや、猫がいるし」「猫が何してくれるの」「体温を分けてくれる」といった会話を英語で投稿。
米国女性からコメントが来た、「わかる。私の場合は犬だけど」 犬も良い……飼いたいな……
iPhoneの充電が10%になった、ネコチャンはスヤスヤしたまま。英語で「動けない、私もiPhoneもこのまま死ぬ」と投稿。イタリア男性から「価値ある死」とコメントが付く。
不意にネコチャンが起きて伸びをする。PCデスクに移り、iPhoneを充電する。大好きな曲(ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ)をかけて5本目のアイコスに手を伸ばそうとすると、ネコチャンが膝に乗って来た。
私は独身男性で29歳で3年交際した彼女と別れて今日も昼からビールを飲んでいた。
致し方なく始めたマッチングアプリでは、盛った写真と高めの年収に釣られた女性から60以上の「いいね」が来る。
「結婚を前提とした~」「将来を見据えたお付き合いを~」といった文言が食傷気味だ。恋愛を辞めるにも始めるにも、必ず「結婚」の文字がチラついた。