「すずめの戸締り」観てきた.新海誠作品は全部観てきたけど,さすがにもういいかなと思ってしまった.
色々言いたいことはあるけど,脚本がダメ過ぎる.脚本には多くの問題があるが,一番問題なのが物語を通じて主人公に成長が無い点である.
主人公は最初から何の問題も抱えていない.何の問題も抱えていないのだから成長しようがないのである.
伯母との距離感に悩んでいたり将来への不安を抱えていたりといった,思春期特有の課題を何一つ抱えているように見えない主人公は,最初から最後まで万能感溢れる陽キャ的存在である.
このようなキャラがわざわざ旅に出て何かを達成する必要があるのだろうか?陽キャで特に欠点もなさそうな女子高生が旅に出たらそりゃ大体何やっても上手くいって当然としか思えない.
だから観ていて自分はこの主人公に好感を持てないし,主人公を応援しようとも思えなかった.
また,多くの「使えそうな設定」があるにも関わらず,ただの舞台装置として浪費してしまっている点も問題であると感じた.
主人公は過去に母親を失うという喪失を経験しており心に傷を負っているのだが,その設定が物語後半になるまで生きてこない.これは非常に勿体ない.
震災を経験したせいで将来に対して異常に悲観的になっているとか,地震や自然災害に対して人一倍敏感になってるとか,そういうフックとして使える設定なのに何故か物語前半では全く活かしきれていない.
ベタではあるがこういう分かりやすい特徴が一つでも欲しかった.そうすればそこから成長につなげる道筋が立ち,旅に出る動機が明確になるのである.
他にもせっかくうまく活かせそうな設定が沢山あるのに,殆どがただの舞台装置として消化されてしまっている.とても勿体ない.今からでも遅くないからコミカライズする時は使えそうな設定をもう一度拾い直してくれ.