近所の人達とはすぐに仲良くなれて、みんな良くしてくれてた。
最初のうちに、特に仲良くなった人達とは毎晩のように集まって真夜中まで話をしてた。
すっごく楽しかった。
そのうち、それもあんまりしなくなってきて、秋になって、いろいろ問題が起きた。
発端は、一人がこちらにも聞こえるくらいの大声で、自分の知らない人と会話してることだった。
最初から、誰と話ししてんだろって気になってたんだけど、段々とそれが苦痛になってきた。
その人をAとしよう。そのAとは別で、もう一人Bってのがいた。そのBも、Aと同じように誰かと話をしていた。よく聞こえるところで、こちらにも聞こえる大きさで同じように話をしていたんだ。
Cという人が、ボクの所へとやってきてAさんとBさんが話してる人、気になるよねって言ってきた。それはそうだ、ボクだって気になる。
そのうち、いてもたってもいられなくなって、ボクは独り言としてそのことを言った。
内容は、こっちにも聞こえる声の大きさで、関係の無い人の話をしないでくれっていう内容。言い方はもっと雑だった。
そうしたら、Bはボクの前から姿を消して、Aはやんわりと遠回しに何かを語りかけてきた。
本人が気がついているのかどうかなんてわからなかった。けれど、わかってたんだと思う。
元より一緒に話をしていた最初のメンバーのうちの二人はどこかへと行ってしまったし、もう一人は良くしてくれたけれど、そういうのは価値観の違いだと思いますよって言ってくれた。ボクはそのもう一人のことを好いていたので、多少はそれで救われたような気がした。けれどそのもう一人は、自身のことを薄情だと言った。優しくしてくれるけど薄情なのか、とか思ってた。
その後、毎晩のように集まって話をしていたことなんかなかったかのように、ボクは一人になった。人間だから、そういうこともある。人の付き合いなんて、感情のすれ違いですぐに良くも悪くもなるんだから。これは自分にも非がある。向こうだけが悪いわけじゃない。
年も明けて、また一人、また一人と離れていってボクは大分落ち込んだ。やってたことで人の目を集めてはいたけど、なんでかボクの所にはなにもなかったかのようなことしか起きなくなった。それが辛かった。
その頃から、ボクに優しくしてくれた人の言ってた薄情ってのは、「本当は薄情なんじゃなくて、ボクのことにまったく興味がないんじゃないか」って思うようになった。
そのことの真実なんてわかんないから、聞くことも無いし、知る由もない。最後に話をしたのは冬だったと思う。
一年前にここに引っ越してきた時、とてもあたたかく迎えてもらえたこと、本当に嬉しくて、幸せだった。前にいたところでは、楽しいことはあっても、幸せには程遠い生活をしていたから。
でも、ここに来たボクは今、その頃よりも酷い状況になってしまったなと思っている。
今でも、まだ良くしてくれる人はいる。けれど、目に見えてほしかったものが見えなくなってしまった。それが辛い。
最近は、ほかの人達と楽しそうにしている、優しくしてくれた人や、後から仲良くなった子の姿を見かける。微笑ましいことだと思う。二人とも、ボクが引き合わせなかったら、お互いの存在は知っているけれど、会うことの無い二人だったのだから。
だけど、微笑ましい反面、ものすごく嫉妬している。子供の嫉妬みたいに。
元々居たところに帰るつもりはないけれど、そこでやっていたことをここでもやろうと思う。そうすることでしか、自分を表せられないのだから。