大きなピアスをした派手好きな女だった。
赤の原色系の服、紫の服。
それでも、マス子は、指がきれいだった。
出会った頃は、人当たりが良かった。
薬指どころか、中指や小指にもRINGをしているところを見たことは、なかった。
初めての会話は、もちろん、当たり障りがなかった。
別の部署の役員室へ電話して「めちゃくちゃ、怒られちゃった...」なんて言っていた。
どじっこの面があった。社会人、何年目やねん...。
女友達といるときは、感情を隠さないマス子。たまに、馬鹿笑いすることもある。
会話した時に、たまに、一時的に感情の激しさをかいま見せたりすることがある。そんなマス子が、目つきが、暗い。なんか気を使っているように、見えた。
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たまたま、話す機会があると、
「忙しいの」「忙しかったの?」
マス子に、クールに言われる。
オレは、なんとなく、いつも、曖昧な返事ばかりをしていた。
と、女友達のBに教えて貰った。
なんか、何を話していいのか、分からない。
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いつもは、胸を張ってあごを出して歩いているように見えるマス子。
それなのに、他の女の子と笑い話をしていたら、沈んだ顔をして目の前3mを通り過ぎた。
下を向いて歩いていた。
一週間後のある日。
その女の子とは、別にマス子の目の前で話をしたわけではない。たわいのない、挨拶に一言添えただけの言葉。で、今日は天気良いですね、みたいなこと。
次の日。マス子と、すれ違った。
一瞬、怒った顔をした。
足早に、オレとは口を聞きたくない、ってぐらいの勢いで、スタスタと歩いた。
子供じゃないんだしさ、情緒不安定なんじゃないのって気もするが。それでも、付き合ってもいない女の子に、ヤキモチを焼かれた?
そう考えたら、悪い気はしない。
なんか、しなきゃ、って気になった。