2020-10-31

ますこ との 思い出(1)

大きなピアスをした派手好きな女だった。

赤の原色系の服、紫の服。

それでも、マス子は、指がきれいだった。

フェイクの指輪とか、しそうだし。

寄せ付けないオーラを発しても、良さそうなものだが。

出会った頃は、人当たりが良かった。

薬指どころか、中指や小指にもRINGをしているところを見たことは、なかった。

初めての会話は、もちろん、当たり障りがなかった。

別の部署役員室へ電話して「めちゃくちゃ、怒られちゃった...」なんて言っていた。

どじっこの面があった。社会人、何年目やねん...。

女友達といるときは、感情を隠さないマス子。たまに、馬鹿笑いすることもある。

会話した時に、たまに、一時的感情の激しさをかいま見せたりすることがある。そんなマス子が、目つきが、暗い。なんか気を使っているように、見えた。

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 たまたま、話す機会があると、

「忙しいの」「忙しかったの?」

マス子に、クールに言われる。

 オレは、なんとなく、いつも、曖昧な返事ばかりをしていた。

 『きっと、その子は構って欲しかったのよ』

と、女友達のBに教えて貰った。

 なんか、何を話していいのか、分からない。

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いつもは、胸を張ってあごを出して歩いているように見えるマス子。

それなのに、他の女の子と笑い話をしていたら、沈んだ顔をして目の前3mを通り過ぎた。

下を向いて歩いていた。

一週間後のある日。

マス子と同じ部署の別の女の子と話した。

その女の子とは、別にマス子の目の前で話をしたわけではない。たわいのない、挨拶一言添えただけの言葉。で、今日は天気良いですね、みたいなこと。

次の日。マス子と、すれ違った。

お疲れ様です』と挨拶したら、『こんにちわ』と返された。

一瞬、怒った顔をした。

足早に、オレとは口を聞きたくない、ってぐらいの勢いで、スタスタと歩いた。

子供じゃないんだしさ、情緒不安定なんじゃないのって気もするが。それでも、付き合ってもいない女の子に、ヤキモチを焼かれた?

そう考えたら、悪い気はしない。

なんか、しなきゃ、って気になった。

ホント、心を動かされてしまった。

しかしそれは、おれにとって悲劇の始まりの序章だった。

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