別に大した事があったわけではない。
自分には恋愛感情や、所謂「母性」と呼ばれる様な物がない。子供や何かを育てたり世話したり守ったりしたいと思った事がない。子供が欲しいと思った事もない。
フィクションの恋愛描写や、現実の恋愛話にときめいたり共感した事もない。
自分が生まれ育った家庭は、自分にとってそんなに悪い環境ではなく、成人した今でも、周りに幸せなご夫婦やご家族がいて、友人も幸せな家庭を築いている。それが自分も嬉しい。カップルであれ夫婦であれ親子であれ、幸せでいてほしいと思う。
でも羨ましいとか、そうなりたいとは思わない。
以前実家に帰った際、両親と何度目かの「結婚・子供についての話」をした。
その時、上記の様な事を両親に初めて伝えた。その理由としては、両親に本当の事を芯から説明し、知ってもらった方が、両親の諦めがつくと言うか、結婚や子供の事で余計な心配をかけ続けなくて良くなるのでは?と思ったからだ。
「何でそんな事を言うの?」が母の最初の返事だった。「私達が悪かったの?」がその次の言葉だった。
悲しそうだった。自分としては意外だった。まず、そんなに大きな反応をされると思っていなかった。「子供が欲しくない」がどうかはともかく、「恋愛感情がないこと」は実際“極めて少数派”なんだろうなと自分でも思っていたから、驚かれるかもなと思っていた。でもああいう反応をされるとは思っていなかった。
「別に誰が悪かったとかではないよ、持って産まれた自分の個性だから」とか何とか言って母を宥めた。それは自分の本心でもあった。
父は終始黙り混んでいた。考え込むようにして俯いていた。
その後の滞在期間中、二人とも自分に結婚や子供について何も言わなくなった。でも何だか二人とも憂いているみたいだった。
多分、自分の両親には本当に理解を得られたわけではないんだろうなと思う。まあそれでも、両親も今ではもうそこまで思い詰めてはいないし、自分も自分の生きたい様に生きていこうとは思っている。