多摩川のタマちゃんのことを覚えている人はまだそれなりに居ると思う。2002年8月に多摩川に出没し一躍有名となったアゴヒゲアザラシの愛称だ。
そんなタマちゃんの絵本「タマちゃ〜ん キミが来てくれたから…」を子どものときに持っていた。その内容は今でも覚えている。題名はすっかり失念していたので今Googleで調べた。
多摩川に流れ着いたタマちゃんは、母親を探すうちにそこに住むカエルと仲良くなり、親交を深めていく。しかし、ある日タマちゃんは突然「お母さんが呼んでる」と言って海の方へぐんぐん泳いでいってしまう。カエルは「声なんて聞こえない、行かないで」と懇願するが、既に遠くまで進んでしまっているタマちゃんにその言葉は届かない。
次のページを開くと、見開き一面に海中が描かれており、中央にタマちゃんのシルエットがぼんやり浮かんでいる。そのページには「目を閉じて僕のことを思い出して。僕はいつでも君の傍に居るよ」みたいなことが書かれていた。この文に関してはかなりうろ覚えなのだが、目を閉じて云々という言い回しがあったことは確かだ。
グロでもホラーでもないのに、このラストの何がショックだったのか。それは、タマちゃんとカエルの唐突で一方的な別れだ。
二人が離れ離れになるだけでも悲しいのに、ラストのタマちゃんはカエルが必死に引き留めていることに気づかない。カエルに感情移入するとあまりにも辛い別れだ。
しかし一方でタマちゃんの、母親に再会したいという気持ちもよく分かる。今まで探していた母親が呼んで(いるような気がし)たら無我夢中でその方向へ向かうだろう。
どちらにも共感できるが故に情緒がめちゃくちゃになった。最後のシルエットのページで指示通り目を閉じタマちゃんのことを考えたら胸が締め付けられた。背表紙を見るとラストシーンを思い出すのでわざと本棚の奥の方にしまい込んだ。
ワイのキンタマもかわええよ