こんなに精神的にキツいとは思わなかった。
きっかけは思いつきだった。
引越しを予定していて、物を減らしたいなと思ったんだ。
「DMMいろいろレンタル」というサービスで、断裁機とスキャナーのレンタル予約をした。
レンタルした断裁機は費用対効果に優れた製品だが、能力に限界はあって
だから
①ハードカバーをとる
②厚い本はカッター等で分割する
ことくらいはやらなけりゃあいけなかった。
これがキツかった。
厚い本を分割するために本を逆方向に折るんだ。
で、そのあとカッターで分割するの。
何かの首を切ったような錯覚に陥ったよね。
いや、思わなかったんだ。
「(誤解しないでほしい。)」
「(良いことをするつもりだった。)」
「(こうすれば、君(本)のことをもっと読んでもっとよく知れると思った。)」
「(ただ殺したんじゃない、生まれ変わるんだ。)」
「(こうすれば、君とずっと一緒にいられる。)」
「(それになんていったってコンパクトだろう?)」
犯罪者がするような言い訳を重ねても本の無残な姿は変わらない。
これで見た目元どおり。読もうと思えば読める。
ああでも、実は死んでいるのだ。壊れているのだ。
まともなように見えていても。
僕は気分が落ち込んだ。何が自炊だ。
凄く非倫理的な行いだ。本を殺して腑分けする行為だ。猟奇的だ。
そこまで考えがいたって、気付くことがあった。
なんだって、動物を殺して腑分けしている本当の自炊がよくて、本を殺すのがダメなんだ?
殆ど笑いたいような、泣きたいような、変な気分だった。
この倫理観は壊れてる。
それでも腹は減るしメシは食う。
本は破るし、断裁はする。