1月4日。
30歳、童貞。私は、人生で初めて便を漏らした。先程のことだ。
こんな日が来るとは、ついぞ思わなかった。2ch(いまは5chだが)や増田で「便を漏らした」という内容を読むたび、対岸の火事であると思い無邪気に笑っていたのだ。
なにしろ、私はアナルオナニーなどは一切していないし、興味だってない。オナホールですら最近興味を持ったぐらいで、まだ購入にすら踏み切っていないのだ。性癖が偏っていることは否定しないが、自身の身体については非常にニュートラルだと言って良い。
しかし、私は便を漏らした。
定番のネタで、下痢「おならです」というものがあるが、まさにこういった状況であった。私は、「これはおならである」と思い世界へ放ったのだ。実際、1分程度はおならだと思い、ガキの使いをHuluで見続けていた。
しかし、いやに“熱い”おならだったのが気になり、ふと股間部を見てみた。すると嫌な臭いがした。そう――下痢だ。
確かに朝から下痢気味だった。しかし、すでに2度ほど便器に座っていたのだ。よもや、まだ下痢が腸に居座っているとは思わなかったのだ。
処理は地獄だった。
なにしろ下痢は臭い。臭いのだ。なにしろ臭い。本当に。本当に臭い。思わず「人間の身体にこんな臭いものがしまわれていていいのか?」と思ってしまうほどに臭い。本当に臭い。あれはまずい。人間の仕組みはおかしいと言わざると得ないだろう。
そして、折り悪く、私が履いていたのは今朝届いたばかりのジーンズだった。馴染ませようと履いていたのが、完全な裏目になった。こちらも非常に臭い。
私は深い哀しみをたたえながら、尻をふき、下半身にシャワーを浴び、パンツとジーンズを手洗いした後、洗濯機へ突っ込んだ。
それは私に彼女も妻もいないことだ。
後処理のあいだ、この考えは常に私とともにあった。こんな情けない姿を、いわゆるパートナーに見られるというのはこの上ないはずかしめに思えたのだ。
童貞で、良かったのかもしれない。