俺、いわゆるマザーコンプレックス。
母子家庭で育った。母に迷惑をかけたくなくて、手のかからないようにしようと思いながら育った。もう3歳くらいからそう思って過ごしてた。なんでかというと、母は寂しがりで、まあメンヘラで、男を求めてた。幼い俺のことは二の次で、よく男と遊んでたね。
んで、流石にガキを家にほっとく訳にはいかないってんで、俺は母と男のデートに連れてかれてた。かといって一緒に過ごす訳ではなくて、車に放置されたり、今風にいうとキッズスペースに放置されたりして過ごしてた。まあそれはそれで楽しかったが。
ただ、圧倒的に母親に甘える機会は少なかったし、自らも望まなかった。母は男と一緒に過ごしているとき、とても良い顔をしていたから。俺の子守をしているときよりも。
男と手を繋いで歩く母を後ろで見ていた。男とキスする姿も見ていた。腰に手を回されたり、膝枕をしてあげたりしている様子も見ていた。大好きな母が幸せならよいと思っていたので、自分のことは何も考えられなかった。
ただ、自分がある程度物事を理解できる年齢になると、こういう感情が湧き始める。
「俺は愛されなかった」。
周りの子供たちが大好きな母親の話をするときの様子と、俺のそれは全く違った。話が噛み合わなかった。よその子は、彼ら/彼女らの親から愛されていることがよくわかった。
誰か、誰でもいい、愛してくれ。寂しい。僕のことをかまってよ…。
気づいた時には、恋人がいながら他の異性と性的な繋がりを持ったり、倒錯した趣味に走りがちになってた。性的なことに安心感が結びついた。理由はわからない。そして不思議なことにセックスしても何も満たされない。愛情がこわい。欲しくて欲しくてたまらなかったものをいざ向けられると、わけがわからなくなる。これは何だ?わからない。助けてほしい。涙が止まらなくなって誰でもいいから抱きしめて欲しくなる。お母さんごめん、俺やっぱりいない方がよかったな。
今いる恋人にも申し訳ない気分でいっぱいなんだ。本当に本当に俺なんかを好きにならせて申し訳ない。抱きしめられると「嬉しい」を上回る「ごめんなさい」で頭がおかしくなる。愛されたかったけど愛されたくない。自分の好きな人にゴミを愛させたくないだろ。俺もお母さんが欲しかったんだ。普通の。マザーコンプレックスじゃなくて普通コンプレックスだったのかもしれないな。
情けねえ