8月は大岡昇平の野火。終戦記念日のある月らしいチョイスで、解説は島田雅彦。
戦場で病気にかかり部隊に見捨てられた主人公が、フィリピンのジャングルの中で生と死のどちら側に自分が属しているかあいまいになるシーンを岩井秀人が朗読する。
司会の伊集院光はこのシーンにシニカルな笑いを受信。岩井秀人も伊集院光もドロップアウト経験者。そういえばこの番組は解説はもちろん、朗読の人選もいつもかなり良い。
しかしあれだな、美しい顔を作ってお金をもうけた高須クリニックは、自らは現代における生死の最前線に居てもおかしくない医者なのに「美しい死」などという幻想を信じている愚か者で、
生も死も美しくなどなくただ現実に悲惨で臭くて場合によってはシニカルに笑うようなものでもあるということを淡々と解説する島田雅彦がナチュラル・ボーン・イケメンだというのが、なんとも皮肉で面白いものだと感じる8月。
そういえば先月7月は、ジェーン・オースティンの高慢と偏見。これも朗読者の選択よかった。ミムラが、プライド高くて底意地の悪い主人公らしくて良かった。