滅多に他人の批判や悪口を言わなかったけれど、そんな祖母が生前に一度だけ、
明確に「許せなかった」話をしてくれたことがあった。
なんとなく、「やっぱり被爆者手帳って嘘ついて持ってる人結構いるの?」と聞いてみた。
原爆被爆者に対する補助はかなり手厚く、年金ならぬ被爆者に対する援助のために
死にかけの親を何とか生かしてくれと頼む家族もいるくらいの代物である。
祖母はあっさりと、「そりゃそうよ」と言った。
「あの人原爆に遭うてないよねって人もおったよ。でも証人がおれば手帳貰えたからね」
「そりゃ良い気分はしなかったけど、でもねえ、もっと許せん人がおったけえね」
おばあちゃんでも許せんくらいの人がいるんだ…と
被爆者の差別をしよった人らが、平気な顔をして原爆手帳を貰っとったんよね。
被爆者じゃないって言いよったのに、何でもない顔をして実はそうでしたって」
やさしい、やさしい祖母だった。
晩年まで寄付やボランティア活動をし、いつも孫やひ孫のことを祈ってくれた。
原爆を落としたアメリカのことも、差別をしてきた人たちのことも
何度か聞いたけれど、悪く言ったことは一度もなかった。
そんな祖母が被爆後70年近く経っても、「許せなかった」という重み。
私からすれば、嘘ついて援助貰いまくってる方が嫌だけれど
それは当事者として苦労したことがないから言えることなのかもしれないと、
一応突っ込まれるかもしれないので書いておくと、
一度手帳を発行した後に取り消させるのは大変なので
取り上げられることはそんななかったっぽい。
被爆者手帳を貰える範囲とか調べてみたことなかった。 市外から投下後に市内に入った人(時間は色々あるだろうからわからないけど)は被爆者になるんだろうか。
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