就職してからは年に1回しか帰省していなかったけれど、今年は色々用事が重なって3回目の帰省になった。
もう蝉が鳴いていて驚いた。実家に居たのはたった3日だったけれど、3日間ともよく晴れて暑かった。でも時々風が吹いて、あけっ放しの玄関から廊下に、部屋にと涼しい風が心地よかった。
帰省の間はずっと家にいた。親が作ってくれたごはんを食べて、洗濯物を干して、ゴロゴロして、昼を作って食べて、昼寝して、親が作ってくれたごはんを食べて、お風呂に入って、テレビを見たり家族と話したりして、眠くなったら寝た。何度か電気をつけっぱなしで寝てしまって、お母さんが消してくれていた。
夏に帰ってくるのは、就職してからは初めてだった。大学生の頃は、春夏冬と休みの度に帰省した。だからか、蝉の声を聴きながら家にいると自分は今大学生なんじゃないかと思った。
わたしはまだ大学生で、夏休みはまだまだたっぷり残っている。なにも心配することはない、まだ将来のことなんてなにも考えなくていい。大丈夫。大丈夫。
そうやって妄想に浸る反面、休み明けの仕事のことが気になった。家族に話すのは仕事の愚痴ばかりだった。
あっという間に3日間の帰省は終わって、電車にゆらり揺られてアパートに戻ってきてしまった。戻ってきたくなかった。仕事も行きたくない。ずっと実家で寝て起きてゴロゴロしていたかった。ずっと永遠に蝉の声がうるさい、暑くてでも風が涼しい夏でよかった。
こうやっていくら戻ってきたくなかった、仕事行きたくないってぐだぐだ言ってても、夏の気にあてられてノスタルジーに浸っていても、仕事を中心とした雑事が常に頭の隅にあって、それがそのうちどんどん膨らんでいってまたいつもみたいにアパートと職場を行き来する生活に戻っていくんだろうなと思う。