友人は障害者福祉関係の施設で働いている。自分は精神を患っており手帳も持っている。二人で会うと四方山話の果てにこの話題になる。
「人の心は、魂は、精神とは何なんだろうか、どこにあるんだろうか」
例えば、急性期発作から治療を受け、治ったと思いこんで怠薬、を繰り返し荒廃した統合失調症患者。
飲み、食い、その辺でクソを垂れる。意思の疎通はほぼ不可能。はっきり言ってしまえば知的レベルはその辺の犬猫以下だ。
彼らに精神はあるのだろうか。
「ある」とするのはかなり苦しい。人間的な精神の活動を観察することはかなりの困難を極める。
彼らは「いつ」精神を失ったのか。
例えば、器質性の痴呆症と言うものがある。友人はくも膜下出血の後遺症で痴呆症になった人を見たと言う。
かつてはホワイトカラーであり、英語も堪能、楽器を弾く趣味もあった。
だが彼は時々知性を取り戻して昔の話をしてくれることもあると言う。
精神を失ったり取り戻したり、そんなことがあるのだろうか。
気分が落ち込んだ時には精神安定剤を頓服で飲むし、躁になりそうだと思えば抗うつ剤を減らす。
脳の神経回路そのものが、心なんでしょう。 くも膜下出血で痴呆症になった人は、その回路の損傷によって知性を失い、 僅かに残った回路がたまたま動くと知性を取り戻したかのように...