子どもの頃から寝付きの良いたちで、眠ることができずに苦しんだことはありません。わたしは睡眠に関してだけは恵まれているのかもしれません。電車に乗っている時などに眠ることはありません。新幹線や飛行機に乗ったとき、目的地に着くまでの間に読むつもりで本や雑誌を持参するのですが、いざ車中の時間がぽんと手渡されても、ページをめくるその気が起きないようなことがあります。そんな時に「それでは時間つぶしに少し眠ろうか」と思って目をつむるのですが、眠ることができないのです。昼間にはどうも眠られない。しかし、夜になって布団に入り、それが自宅であろうと旅先であろうとも、わたしは必ず(おそらく)10分ほどで眠りに落ちているように思います。その過程はうまく説明できませんが、たいへんスムーズなはずなのです。ところが今夜、眠れません。
通常わたしは寝つきが良い上に早寝であり、ふだん22:00には眠くなり、遅くても23:00には布団のなかで熟睡しています。今夜もそのように布団カバーを交換したばかりの気持ちの良い寝床に入りましたが、眠りにつくことができない。経験したことのない事態に1時間ちょっとで参ってしまいました。きっかけは昼間にあった少し腹のたつ出来事でした。仕事をする上でよくある陳腐な出来事。そのことをつらつらと思い出すうちに、わたしに接する小さな関係に思い至り「だから君は駄目なんだ」と、自分が不甲斐なく情けなく、いつの間にか涙を流しておりました。ラベンダーとゼラニウムの香りを寝室いっぱいに満たし(無印良品のアロマディフューザーを使用し)ても、涙が止まらなかったのです。