2016-05-02

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夜の底は柔らかな幻を読んだ。ミステリーサスペンスが始まると思ってたのに、めくるめく現代SFファンタジーが始まったからびっくりした。高知県の山奥がすごいことになってしまった。

恩田陸SFファンタジーというと、劫尽童女を思い出す。個人的に結末が尻すぼみに感じられて残念な読後感だったけど、今作はスケールの大きさにも投げっぱなしジャーマンにも圧倒されてしまった。

すごい。最後までよく分からない重要用語があり、使われている超能力みたいな力が何由来なのか、いろいろ疑問は尽きないけれど、そんなこと関係なくとにかく面白い熱量が本当にすごい。

上巻の終わりがけなんて、バトル描写が冴え渡っていた。ライトノベル意識しているのかとも勘ぐっちゃたけど、書きたいように、書かねばならないように書き切った大作なんだと、上下巻を読み終わってから認識を改めた。

いろいろな人の結末が知り切れトンボで終わってるけど、それさえ悪い効果をもたらしてない。このぶつ切り感が、作品根底に流れているの重要な要素の一つになっているんだと思う。

加えて登場人物のその後の人生想像するのも面白いしね。例えば最後に二人は下山出来たのだろうかとか。軍さんは死んじゃったのかとか。占部さんとみつきはどのような報告を受けるのだろうかとか等々。個人的に、ぼろぼろの二人には生き残ってもらいたし、葛城には改心してもらいたいなって思う。しなさそうだけど。

凄惨描写もあって結構惨たらしい内容だったけど、随所に現れる象徴的な風景描写が秀逸で、読み進める内に不思議世界に迷い込んでしまった。

ただ本当にミステリーだと思って読み始めたので、冒頭の数十頁はよく分からない単語説明もなしに出てくるし、何がなんだかわからないまま読まなければならなかったので辛かった。

そこさえ過ぎてしまえば、高地山中にある秘境からいっきり突き落とされるような読後感ま、でノンストップで突き進める。壮大な作品でした。

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