色黒の顔を隠すかのように、全身黒の野暮ったい服を着た
すぐ傍には思いを寄せている係長がいた。
綾香さんが会社に来たとたん、係長が嬉しそうな顔になるしさぁー」
近くに係長がいることを知った上で聞こえよがしに厭味を言う。
その夜。
仕事が終わり、ある家での会話。
「ほーんと傑作っ」
差し出されたグラスを受け取りながら、綾香は答えた。
「『綾香さんが会社に来たとたん、係長が嬉しそうな顔になるしさぁー』って。
まったく、何も知らないって怖いよな。
こっちは、会社でも家でも、綾香の顔を見てるっつうんだよ」
「でも、あんな言い方されて腹が立たない?」
「いや気にしてないならいいけど。…でもなんかひとこと言い返してやりたいよな」
「…じゃあ、さ。」急に真面目な顔になる綾香。
「えっ、なに?」
「ここに連れ込んでよ、あのひと」
「え?」
「だから、あの女を誘惑して、ここに連れてきて」
「で、どうするの?」
「復讐?」
「女はね、一度抱かれると、ますます、その男を好きになってくの。
で、もう後戻りできなくなった頃に、種明かしをするの。
…どう?抱ける?」
「うーん…女ってずいぶんと残酷なこと考えるんだな」
「その女がだーい好きなのは誰よ」
「うるさい」
黙らせる代わりにその唇を塞ぐ。
その肩を男の顔の前に差し出す。
数箇所、歯型の痕が赤々と残っていた。
では聞いていただきましょう絢香でhttp://anond.hatelabo.jp/20150918034045