2014-07-21

おきなわ

那覇空港に着いた。

僕は汗を拭きながら、ゆいレール那覇空港駅へ向かう。

とにかく、北へ行こうとしていた。

終点首里駅から先は、ひたすらバスを乗り継いで行った。


僕は一人だったけれども、孤独ではなかった。

沖縄の日射しを浴びている僕は、名のない大学学生名簿に登録された一人の学生ではなくて、社会から切り離された何かだった。

自然と僕はスマートフォンを弄らなくなった。

iPodの音量を少しだけ下げた。


沖縄県日本領土だけれども、その実体日本ではなかった。

米軍基地A&Wショッピングモール、南国の空気、青過ぎるほどの海。そのすべてが日本的ではなかった。



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彼女は心の病気だった。

軽い摂食障害で、一緒にいるときほとんど食事らしい食事をとらなかった。

薬が切れると手が震えていた。

僕はそれを見て、何も感じなかった。

軽蔑も恐怖も、愛情も感じなかった。

しかしたら無意識のうちに、自分の中のネガティブ感情を抑えようとしていたのかもしれない。


彼女が車を運転して、僕は助手席に乗った。

免許は持っていたが、完全なペーパードライバーだった。

ペーパードライバーメンヘラ、どっちの運転が安全かな?」

彼女冗談を言った。


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まだ獣の臭いを残している野良猫がそこら中に屯している。

鋭い眼光を縫うようにして、僕らは浜辺へ歩いて行った。

青すぎる海は、非現実的ですらあった。

僕は目の前の海が本当に存在しているのか怪しくて、足をつけるまでそれが海だと信じられなかった。


骨と皮だけに見える彼女の肉体を、薄いワンピースが包んでいた。

裸足を波に浸すと、尖った踝だけが僕の目にとまった。


確かに、僕と彼女人生が、そこで交わっていた。

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