那覇空港に着いた。
とにかく、北へ行こうとしていた。
僕は一人だったけれども、孤独ではなかった。
沖縄の日射しを浴びている僕は、名のない大学の学生名簿に登録された一人の学生ではなくて、社会から切り離された何かだった。
iPodの音量を少しだけ下げた。
米軍基地、A&W、ショッピングモール、南国の空気、青過ぎるほどの海。そのすべてが日本的ではなかった。
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軽い摂食障害で、一緒にいるときもほとんど食事らしい食事をとらなかった。
薬が切れると手が震えていた。
僕はそれを見て、何も感じなかった。
もしかしたら無意識のうちに、自分の中のネガティブな感情を抑えようとしていたのかもしれない。
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鋭い眼光を縫うようにして、僕らは浜辺へ歩いて行った。
青すぎる海は、非現実的ですらあった。
僕は目の前の海が本当に存在しているのか怪しくて、足をつけるまでそれが海だと信じられなかった。
骨と皮だけに見える彼女の肉体を、薄いワンピースが包んでいた。
裸足を波に浸すと、尖った踝だけが僕の目にとまった。