おまえらのかーちゃんがお腹を痛めて産んで育てたおまえらを、おまえらのかーちゃんは誰よりも大切にしてきたはずだ。
俺はオタクだがBL趣味はわからないし、理系だからおまえらがハマってるような小説は読まないし、真面目系長身メガネだが、時々pixivとかに流れてくる「理想の彼氏」みたいなイケてる外見じゃないから、おまえらの萌えの対象には入らないだろうけどさ。
俺にもかーちゃんがいる。おまえらと同じように。
おまえらのかーちゃんと同じように、俺のかーちゃんも毎日弁当を作ってくれた。
俺が塾に通えるように、每日パートを頑張って、お金を稼いでくれた。
俺が志望の大学に落ちた時には、「あんたは勉強をする楽しみがわかったんでしょう。ならそれでいいんだよ」と言ってくれた。
俺が滑り止めの大学で、落ちぶれて每日麻雀やってて留年した時には、「何よりまず、楽しむことが重要だよ」と言って許してくれた。
俺が彼女をはらませて、必死で中絶させるための金を稼いで、その後彼女と喧嘩別れして、泣いて実家に帰った時には、何も言わずに温かい味噌汁とハンバーグを作ってくれた。
だけどある日、俺が「俺なんて生まれて来なければよかった」
って言った時には、すげえ張り手をくれた。
ビリビリ痛くて、ほおの赤い跡が次の日まで残っていた。
かーちゃんは張り手かました後、いじけて朝まで泣いていた。
泣き声が二階まで聞こえてきた。
俺は部屋に引きこもって、しばらく口を利かなかった。
それからまもなく、かーちゃんは死んだ。
ずっと病気だったらしい。俺は気が付かなかった。
「あんたには、あんたのことを誇りに思って欲しいんだよ」
病床でかーちゃんはそう言っていた。
俺は照れくさくて、「そんなこと言ってないで、早く元気になってくれよ。いくらでも親孝行するからさw」
なんて言ってた。
でも呆気無く、かーちゃんは死んだ。
かーちゃんがいなくなった後、俺は、人の親になった。
少しだけど気分が晴れて、ささやかだけれど家族と、幸せな每日を過ごしている。
俺はかーちゃんの気持ちが、なんとなく分かるようになった。
かーちゃんに言うべきだったことがある。でももう言えない。決して言えない。