*いろいろな経緯を経て羅生門の感想文を800次でまとまることになった。せっかく書いたんだから公開しようと思って。
この小説は「下人」の我欲と良心の間で揺れ動く心を、豊か語彙の写実的な情景描写で描いています。この小説のテーマは、人間が犯罪を起こす心理です。
「下人」は、数日前に解雇されて収入も帰る家もなくなり、餓死しそうになっています。餓死しないためには、盗人になるしかありませんが、彼は道徳を破る勇気がありませんでした。そして彼は、生活のために死体から髪の毛を抜く「老婆」に出会い、一旦は死体あさりをする「老婆」を、正義の心から憎みます。しかし、「老婆」を捕まえると徐々に彼は彼女を見下すようになり、最終的に彼女の言い訳を聞いて、「盗人にならなければ餓死してしまう」という現実を受け止め、盗人となることを決心し、彼女の着物を奪いました。
初め盗人になる勇気がなかった下人が、最後はなぜ引剥ぎをしたのでしょうか。その原因は、彼が老婆の主張の矛盾に気づいたからです。下人への言い訳の中で、初め老婆は髪を抜いた死体の生前の犯罪を非難します。しかし同時に、自分のした死体あさりを「餓死しないために必要な行為」だとして正当化します。この矛盾の原因は「自分の生存のためなら犯罪も仕方ない」という身勝手な考え方です。下人は老婆の言い訳の主張の矛盾に気づき、彼女の考え方に従えば自分の犯罪を正当化できると考えたのです。結局下人は、死体から髪を抜いていた老婆を軽蔑していたのに、自分も同じ立場になってしまいました。この下人も、いつかは老婆と同じように犯罪の対象になるでしょう。筆者はこのことを、下人が夜の闇に消え、行方不明になるという表現で、さらに犯罪が繰り返されることを暗示しています。