あなたが結婚し家を出てから、母上はきっと孤独になるでしょうけど、たぶん
社会的な共同体に参加したりして、友人や遠い親戚などと接しながら、
同じく孤独な人たちと仲良く暮らしていくのではないかと思います。
あなた方姉妹を立派な社会人として世に出し、大きな困難に見舞われることもなく
無事平穏に生活できていることは、今も昔も家族にとって最高の安心です。
だから、現在あなたがお付き合いしている方を切り捨ててまで、つまりあなた自身を
犠牲にしてまで母上を助けてあげようとか、これまで母上が犠牲にしてきた時間を
あなたが償おうとか、そういった類の考えは、逆に、母上の生活に混乱をもたらすものなので
決して奨励されることではありません。
母上もそれは望んでいないでしょう。
あなたが母上を強く想うことは、おそらく生物としてなんら偏重したことではありません。
その点は全くご安心ください。
猫を例に出します。
母猫は産まれて間もないわが子に近づく人間(飼い主)を
強く威嚇して、わが子とわが家庭を守ります。
様々なことを厳しく教えます。
爪のしまいかたから始まり、毛づくろいのしかた、壁の登りかた、
獲物のしとめかた等、これらが出来ない猫は、おしなべて、
立派に成人したわが子が母猫に対し、普段のように接することを
母猫は強く拒否します。わが子が怪我をするくらい強く遠ざけ、
強引にわが子の自立を促すのです。
自由になる、という意味もあるのです。
もし成長過程のわが子が事故や病気に遭い、立派に成人できそうも
ないと見込まれれば、母猫は生涯をつくして、わが子の世話をします。
永遠に大人になれないわが子。猫に限らず、あらゆる母親にとって
これほど悲しい事実はないでしょう。
あなたは十分に立派な成人です。
母上はそれを強く拒否するでしょう。
猫のように、あなたを殴り叩き出すことは無いでしょうけど
その代わり、あなた自身が気づかなければなりません。
なにが最も大切なことなのかを。