1つはタイヤの上に座っておしゃべりして、
おしゃべりしているグループは大勢いて、
背は小さいけど誰よりも元気な子。
僕はそのどちらでもないグループ。
真ん中にぽつんと立ってどっちに行こうか迷っていた。
おしゃべりしているグループの一人が歌い出した。
歌詞が間違っていたので、みんなが間違っている部分を歌ってみせる。
そのうち大合唱し始める。
2人でボールを蹴りあいながら、校庭を目一杯使って、いきおいよくボールと跳ね回っていた。
ふと迷っているうちにボールが近くにとんできた。
ボールは高くバウンドしていて、いきなりだったので僕の頭上高く通り越してしまった。
僕は思う。
ここで踏み出さなきゃダメなんだ、と。
あの子から声をかけられてもまともにしゃべれなかった。
その時の僕は判断する能力が鈍っていて、
なぜか誰かが横で歌っているんだろう、
変な子だな、とぼんやりとした頭で思いながら、
ふと信号が青になって横を見ると、うつむいたあの子の顔があった。
僕は動けなかった。体が動かなかった。
停めてあった車にぶつかって転んだ。
あの子があんな顔をしている。それも自分のせいで。
そんな体験をしてもなお、また会える日をぼんやりと待ちながら、
また会ったらあの日の事を謝ろうとそれだけを思っていた。
彼女は忘れてるに違いないのに。
僕は思う。
今ならまだ取り返せるんじゃないだろうか、と。
大人になった今ならーーー
と、その時、あの子が飽きたのか、ボールをキャッチして別のグループに行こうとした。
瞬間、僕はまた臆病になって、声をかけようとしていた体勢を崩した。
そしてふと横を見ると、ボールを蹴った子が消えていた。いや、消えている最中だった。
霞のようにだんだんと見えなくなり、まるでこの世界には始めからいなかったかのように、消えた。
慌ててもう一度好きな子の方を見ると、
その子も、また、おしゃべりしていたあのグループも一緒に消えていった。
降っていた霧雨にさらわれたかのように、みんなみんな、消えてしまった。
僕は始めから傍観者であり、自分を大人だと自覚した時に、はっきりと、
もうあの輪の中にはもう加われなくなったのだ、と。
僕は今精一杯生きることができているだろうか。
あの子供達は今どうしているだろうか。
一人はここにいて、木偶のように突っ立っている。
あの日から動けないまま、ずっと、この校庭で。