2011-06-29

霧雨の中、校庭ではしゃぐ2つのグループがあった。

1つはタイヤの上に座っておしゃべりして、

もう1つはサッカーをしているグループ

おしゃべりしているグループは大勢いて、

サッカーをしているグループは2人しかいない。

だけど好きな子がいる。黒髪ショートの小さな子。

背は小さいけど誰よりも元気な子。

僕はそのどちらでもないグループ

真ん中にぽつんと立ってどっちに行こうか迷っていた。

おしゃべりしているグループの一人が歌い出した。

歌詞が間違っていたので、みんなが間違っている部分を歌ってみせる。

そのうち大合唱し始める。

きな子友達ボールを蹴り合っていた。

彼女から誘ったのだろう。

2人でボールを蹴りあいながら、校庭を目一杯使って、いきおいよくボールと跳ね回っていた。

ふと迷っているうちにボールが近くにとんできた。

ボールは高くバウンドしていて、いきなりだったので僕の頭上高く通り越してしまった。

きな子ボールを取りに行く。

僕は思う

ここで踏み出さなきゃダメなんだ、と。

小学校6年間と中学校3年間、ずっと思いを伝えられなくて、

あの子から声をかけられてもまともにしゃべれなかった。

高校生の頃、歩道橋であの子から声をかけられた時があったが、

その時の僕は判断する能力が鈍っていて、

なぜか誰かが横で歌っているんだろう、

変な子だな、とぼんやりとした頭で思いながら、

ふと信号が青になって横を見ると、うつむいたあの子の顔があった。

僕は動けなかった。体が動かなかった。

そのうち彼女が視界から見えなくなると、僕は自転車に乗って、

停めてあった車にぶつかって転んだ。

喪失から、ただただ、僕はもうダメだと思った。

あの子があんな顔をしている。それも自分のせいで。

そんな体験をしてもなお、また会える日をぼんやりと待ちながら、

また会ったらあの日の事を謝ろうとそれだけを思っていた。

彼女は忘れてるに違いないのに。

僕は思う

今ならまだ取り返せるんじゃないだろうか、と。

大人になった今ならーーー

と、その時、あの子が飽きたのか、ボールキャッチして別のグループに行こうとした。

瞬間、僕はまた臆病になって、声をかけようとしていた体勢を崩した。

そしてふと横を見ると、ボールを蹴った子が消えていた。いや、消えている最中だった。

霞のようにだんだんと見えなくなり、まるでこの世界には始めからいなかったかのように、消えた。

慌ててもう一度好きな子の方を見ると、

その子も、また、おしゃべりしていたあのグループも一緒に消えていった。

降っていた霧雨にさらわれたかのように、みんなみんな、消えてしまった。

しんしんと振る雨の中、僕は思う

最初から僕はどちらのグループにも属していなかったのだ、と。

僕は始めから傍観者であり、自分を大人だと自覚した時に、はっきりと、

もうあの輪の中にはもう加われなくなったのだ、と。

僕は今精一杯生きることができているだろうか。

あの子供達は今どうしているだろうか。

一人はここにいて、木偶のように突っ立っている。

あの日から動けないまま、ずっと、この校庭で。

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