2022-12-18

暇な医者の空白

学生時代、何故か俺の友人にはいわゆるヤンチャ系の友人が多かった。

皆若く、それなりにワルさもしていた。


彼らは所謂オヤジ狩りを度々行っていた。

自身は保身もあって直接関わった事は無いが、よく飲みの席で「成果」を自慢されたり

狩られる対象オヤジ共の情けない有様の話なんかを酒の席のネタ話にしていた。

友人らもガタイの良いオヤジは狙わずダサくしょぼいオッサンターゲットにしていると言っていた。


そんな折、あるオヤジを襲った際。詳細は多少ぼかすが被害者オヤジ後遺症が残る重症となり

警察沙汰となって友人達も大変な思いをする羽目になった。


そんな友人らとは一時的には疎遠となりつつ、俺は普通に大学に行って医学部を無事卒業医者になった。

人達も多少回り道をした奴もいたが、30も過ぎる頃には皆それなりの立場に落ち着きそれぞれの家庭を築いていった。

彼らとは今でもたまに会ってはお互いの近況を語り合っている。

皆、すっかり良くも悪くも「良いオヤジ」になっていた。


更に時は過ぎ、狩られていたオヤジ達と同年代になった頃

俺が勤めている病院に手足の不自由患者が通院する様になった。

何度か診療して話を聞く内、その患者オヤジ狩り被害で今でも身体不自由な事や

怪我が原因で仕事もクビになり、妻子とも離婚し、現在障害年金と親の遺産を細々と切り崩しながら生活をしているという。

患者の年齢や障害を負った時期や原因などから察するに、友人達若い頃の過ちの被害者である可能性がある。

オヤジと言っても当時30代だったらしいが。でも10代からしたらオヤジオヤジだろう。


今の姿は悲惨一言だが、襲われた当時もそこらにいる「ダサいオヤジ」だったのが目に見えて分かるしょぼそうなタイプ

ただダサく弱そうだというだけで、人生を狂わされたって訳だ。

俺も友人達も今では元オヤジの年齢すらも通り越し、とっくの昔に狩られるかもしれない立場になってしまった。


暗い夜道を帰る際などは一応気をつけてはいるが、ヤンチャ連中のターゲットにならぬ様に

せめて身なりぐらいはきちんとしてないといけないと改めて思い、年甲斐も無くスポーツジムにも通い始めた

家族や周囲の人には「最近腹回りが気になって~」とは言っているが、実際の理由は話せていない。


オヤジ境遇には同情はしつつも、「運が悪いなー」という感想しかわかない自分は、きっと心が無い、空白の人間なのかもしれない。

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